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記事2008年9月23日 2110号 (6面) 
トップインタビュー 「教育はこれでよいのか」 世の中の役にたつ仕事をしたい
財団法人日本ユニセフ協会会長 赤松 良子氏
成功には資質、努力、運が必要
よい友人持つこと大切



自由奔放に育ち、特に英語が好きだった


 私の子供のころは、自由奔放に育ったと思います。旧制の大阪府立夕陽丘高等女学校(現・大阪府立夕陽丘高等学校)でしたが、姉の影響で英語が好きな生徒でした。女学校を卒業後、神戸女学院専門学校へ入学しましたが、上京後、津田塾専門学校英語学科(現・津田塾大学)へ入学しました。東京で英語を勉強したかったからです。先輩には森山眞弓(元・法務大臣)さんがいらっしゃいました。卒業後、東京大学法学部政治学科に入学しました。
 父は油絵の画家で、若いころ黒田清輝に師事しました。父はどうしても画家になりたいという強い希望を持っておりまして、大阪から東京の美術学校に行きたかったようで、私は、父のそのような気質を受け継いだので、汽車が大変な時に、上京したのかも。
 私は、幼いころ、子供心に一生ちゃんと、自立した生活ができるようになりたいと思っていました。そこで、大学を卒業したら公務員として、働いていこうと思いまして、大学在学中に国家公務員試験を目指し、合格したのです。考えてみますと、私はアンビシャス(ambitious)な少女だったと思います。


文化を通して国際貢献と日本文化の発信


 文部大臣就任(平成五年)の記者会見のとき、私は自分の夢を述べました。
 それは、日本が文化を通して国際貢献したいということです。特に、アジアの女性に対する識字教育の支援は実現し、その後、識字教育の予算が措置されています。
 もう一つは、国際社会に日本から文化を発信できるように日本に水準の高い文化を育てることです。
 また、日本の英語教育について、考えるところがありました。
 日本人は「読むこと」「書くこと」はできますが、「聴くこと」が苦手です。英語は小さい時から耳に慣れさせることが必要と考え、小学生から外国人教師による教育ができないかと提案していました。当時は、国語教育の方が大事だという理由で、これは採用されませんでした。
 ボランティア教育にも力を入れたかったのです。最近、若い人がボランティアに進んで参加するようになってきましたが、当時はまだまだボランティア精神に欠けているように感じたからです。
 また、私はフランスの例を挙げて、「幼保一元化」に取り組みたかったのですが、これも当時は、幼稚園は文部省、保育園は厚生省の管轄という意識が強く問題にされませんでした。


信用される日本ユニセフ協会を目指す


 平成元年以降、文部大臣就任期間を除き、財団法人日本ユニセフ協会の理事を務めていましたが、今年六月に会長に就任いたしました。日本ユニセフ協会の活動の中心は、日本国内での募金活動です。最も重要なことは、募金の使い方として、信用される使い方をしなければならないということです。つまり、募金の使途がクリアでクリーンでなければなりません。
 ユニセフは現在、世界中の百六十七カ国に事務所があり、職員は皆さん頑張っています。日本のユニセフへの拠出金は、二〇〇七年度合計では百四十二億円で、これは世界でトップです。


大学院ではリーダーシップ論を教えた


 私は文京学院大学大学院の経営学研究科で、「いいリーダーとはどういうものか」のテーマで、リーダーシップ論を教えていたことがあります。優れたリーダーを紹介して、いいリーダーの資質とは何かを考えたのです。学生たちからは、心意気があること、華があることなど、さまざまな考え方が出て、面白い議論ができました。
 作家の塩野七生さんの、古代ローマの興亡をえがいた『ローマ人の物語』の中で、@知的能力と人間性に優れていることA説得力があることB体力的に持続力があることCセルフコントロールができることD持続する志――をリーダーの資質として挙げています。
 学校が目指す人材像について参考になると思います。


世の中の役にたつ仕事をしたい


 社会で成功するには、@資質A努力B運(めぐり合わせ)の三つが考えられます。私なりに努力もし、いい先輩や友達との出会いを含め、めぐり合わせもよかったので、よい人生を送ることができたと感謝しています。人生で、よい友人を持つことはとても大切ですが、これにも努力が必要で、時間と、金とエネルギーを惜しんでいては、よい友人は得られないと知るべきです。
 最後に、八十歳を間近にしている現在も、命ある限り、世の中の役にたつ仕事をし続けたいと思って暮らしています。

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