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記事2008年9月23日 2110号 (3面) 
私情協 短大部門FD/IT検討会議開催
身の丈に合った、焦点を絞ったFD必要
教育成果の課題明確化が重要
 私立大学情報教育協会(会長=戸高敏之・同志社大学工学部教授)は、平成二十年度短期大学部門FD/IT検討会議を九月四日、東京・市ヶ谷の私学会館で開催し、三つの事例紹介、全体討議を行った。
 事例紹介では、「教育研究推進センターを中心とした教育改革への取り組み」と題して、自由が丘産能短期大学の池内健治・教育研究推進センター長が、次のように報告した。同短大では、ディプロマポリシー(学びの到達目標)、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシーを明文化しており、カリキュラムポリシーは教養科目・専門科目・課題実践科目ごとに教育目標として掲げている。またアドミッションポリシーについては、入試の段階で受験生に合意を求めている。
 FD活動については、開学当初から新しい経営手法などの研修会を実施してきた。現在、FD組織としては教育研究推進センターがあり、センターでは、例えば、教育目標の達成度や教育成果の評価をはじめ、新任教員および教職員の研修、新しい教育方法・教育技法・教育プログラムの開発、GPAおよび成績評価結果の分析と改善、学生による授業評価の実施と分析、ピア・レビューの実施と課題の明確化、FDレポートの発行等の情報発信など多種多様なことを実施している。ただし、活動内容は、三年スパンくらいで見直しを行っている。特に教育方法については新しく作っていかないと、従来の方法では今の学生に通用しない。このため、改善・開発等が非常に重要だ。教育成果についても、主要科目の評価、科目群の評価、さらに二年間の教育成果の課題を明確にしていくことが非常に大きな役割になっている。しかし、規模の小さな短期大学では身の丈に合った、かつ焦点を絞ったFDが必要だ、などと池内センター長は話した。
 次に「学生ニーズにフォーカスする教育プログラム」と題して新潟青陵大学短期大学部の野中辰也・准教授が報告した。
 同短大は、平成十六年に文部科学省が奨励する地域総合学科設置構想に基づき改組転換して「人間総合学科」を設置。同学科の人間総合コースでは様々な専門教育が行われている。科目数としては二百四十二科目が設置され、フィールドの中にユニットが置かれ、ユニットの中に科目群が置かれている。学生は「ファッション」「フード」「ビジネス」「英語・情報」「ライフデザイン」の五分野のいずれかを中心に学ぶが、希望に応じて他分野の科目も履修できる。また、途中での進路の見直しもできる。教育課程は、学生の多様なニーズに応えるため、ほぼ毎年改編作業をしている。授業評価、授業公開、アドバイザー(指導教員)制も実施。入学直後に学生にノートパソコンを貸与し、Nキャンパスと呼ぶポータルサイトで授業に関する様々な作業をオンラインで行っている。
 キャリア教育・就職支援では、就職課へキャリアカウンセラーを常駐させているほか、合同企業説明会、アドバイザー教員による個人面接・小論文指導・企業訪問等も実施している。その他、学生対象のオリエンテーションを四〜五日と長期間実施し、きめ細かい履修指導だけでなく関連資格に関する説明なども行っている。さらに、数年前から保護者対象のオリエンテーションも実施、これに幼児教育学科はほとんどの保護者が参加、人間総合学科も半数程度の保護者が参加する、などと野中准教授は話した。
 高田短期大学は「保育者養成校の特色ある総合演習教育と子育て支援〜ボランティア体験と地域連携〜」と題して、三宅啓子・子ども学科長と、福西朋子准教授が発表した。同短大では、阪神・淡路大震災を契機にカリキュラムに科目「総合演習―ボランティア精神(以下、総合演習)」(二単位)を置いて必修化し、現在、子ども学科の全学生が三回以上の地域ボランティアを体験している。「総合演習」は二年次の一年間のゼミ式授業で、基礎学習の後、学生自身が自ら情報収集・計画し、ボランティア活動を体験、ゼミへの報告を行い、研究テーマを決めてレポートを作成し、研究発表会で発表する、という流れで学習する。
 一方で、「子育て応援隊」(課外活動)というボランティア活動は、育児文化研究センターが公募で実施しており、ここは総合演習で身につけたボランティア精神を発揮できる実践的応用学習の場となっている。活動例としては、子どもひろば、親子クッキング、親子製作教室などが挙げられる。学習過程をあげると、総合演習、子育て応援隊での実践活動、教員と学生によるカンファレンス、意識の変化や新たな課題の発見と意欲向上があり、カリキュラムの開発および授業の工夫・FD、評価、とつながっていく。
 地域連携では、津市教育委員会生涯スポーツ課、三重県「みえアカデミックセミナー」「フレンテみえ(三重県男女共同参画センター)」等とのつながりをもとに、地域貢献や子育て支援活動を実施している、などと三宅教授は話した。
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