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記事2008年9月13日 2109号 (1面) 
中長期的な大学教育の在り方検討へ
鈴木文科相が中教審に諮問
国際競争力向上へ
大学の機舶ェ化を促進
 鈴木恒夫・文部科学大臣は、九月十一日、中央教育審議会に対して、「中長期的な大学教育の在り方」について諮問した。教育振興基本計画で、計画期間である平成二十年度から五年間を高等教育の転換と革新に向けた始動期間と位置づけ、中長期的な高等教育の在り方を検討し結論を得る、としたことから検討に着手するもの。具体的には、(1)社会や学生からの多様なニーズに対応する大学制度及びその教育の在り方(2)グローバル化の進展の中での大学教育の在り方(3)人口減少期における我が国の大学の全体像、またこれに関連して大学教育に係る各種行財政システムも検討する。またこの日の総会では同計画の円滑な実施について検討する「教育振興基本計画部会」の設置を決めた。

 大学をめぐっては、本格的な知識基盤社会に向けて国際的な競争が激しさを増す中で、大学に対する社会の期待が増加、様々な分野で活躍できる優秀な人材の育成、大学の質の確保と保証が不可欠となっている。そうした背景の中で先行する議論も念頭に置きつつ検討を進める。
 検討課題(1)の「社会や学生からの多様なニーズに対応する大学制度及びその教育の在り方」に関しては、大学教育の水準の維持・向上を図りつつ、多様なニーズに適応する大学教育の実現方策について学生本位の視点に立った検討を行う。また一人ひとりの学生に応じた大学教育が提供され、その質保証がよりきめ細かく行われるよう、「学位プログラム」を中心とする仕組みの導入の是非、人的・物的環境の在り方、さらに医療系人材等社会的な要請の特に高い分野における教育課程の充実、教育活動の評価、社会との連携等、人材養成の在り方を検討する。加えて学生の達成すべき学習成果の明確化、今後の設置認可、自己点検・評価、認証評価、分野別評価等を通じて大学の質保証システムをどう構築するか、学習の履修支援方策等について検討する。
 課題(2)の「グローバル化の進展の中での大学教育の在り方」に関しては、大学の国際競争力向上のため、大学での教育・研究、学生支援や環境整備、国際化に係る認証等の支援の在り方、大学評価への国際的な視点の導入、OECD等で準備が進められている世界的規模の大学評価への対応、アジア域内等の国際的な学生・教員の流動性向上の促進策などを検討する。
 課題(3)の「人口減少期における我が国の大学の全体像」に関しては、人口減少期での大学全体の健全な発展方策、大学の機能分化の促進と大学間ネットワークの構築、全国レベルと地域レベルのそれぞれ人材需要に対応した大学政策などを検討する。これら課題は大学分科会を中心に検討することになるが、多岐にわたるため審議の区切りのついた段階で逐次答申等がまとめられる。
 総会では諮問事項について自由討議したが、梶田叡一副会長(兵庫教育大学長)からは国の財政事情が厳しいことから、「国が責任を持つ分野を絞り込むべきで、その他は私学に任せてもいい」といった意見や、ノーベル賞受賞者の野依良治・理化学研究所理事長からは、財政とセットでの議論の必要性を、安西祐一郎・慶應義塾長は、我が国の大学への公的支出がOECD加盟国中最も低く家計負担に頼っていること、家計格差が学歴格差となる傾向が出ていることなどを指摘、これまで回避されてきた国私立大学の役割分担を議論すべき時期だと指摘した。
 教育振興基本計画に関しては、同省は重点的に取り組むアクションプランを策定、公表、また毎年度点検を行い、その結果を公表する。
 教育振興基本計画の原案を作成した中教審の特別部会長だった三村明夫副会長(新日本製鐵会長)は、「財務省の財政制度等審議会と中教審では事実認識があまりにも異なっている」と指摘、政府部内で日頃から議論を戦わせてほしい、と要望した。
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