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記事2008年7月23日 2105号 (1面) 
大学基準協会 専門分野別評価の方向性で研究報告
大学院の質保証へ
教育プログラムの評価が重要
 我が国の高等教育にとって国際的に通用する質の保証は喫緊の課題。なかでも大学院教育の充実が最重要課題だが、財団法人大学基準協会はこのほど、「専門分野別評価システムの構築―学位の質保証からみた専門分野別評価のあるべき方向性について」と題する調査研究報告書を公表した。大学院の学位の質保証には専門分野別評価が重要との認識から、各専門分野で普遍的に求められる評価の視点を検索し、大学院における質保証に繋がる専門分野別評価の方向性を示したもの。

 この調査研究は、文部科学省の補助金(平成十九年度年度大学評価研究委託事業)を得て、同協会内の大学評価企画立案委員会ワーキング・グループ(生和秀敏主査)が実施した。専門分野別評価の方向性を研究するに当たっては、国公私立の全研究科を対象にしたアンケート調査を行い、また特色ある研究科の訪問調査、欧米における文献研究などを通じて専門分野別評価のあるべき方向性を研究した。そのうちアンケート調査の結果からは、我が国の大学院の抱える課題などが明らかになった。修士課程でも博士課程でも七〇%以上の大学が入学定員を割り、論文審査以外の教育成果に関しては基準が明確になっていない研究科が多く、授業は担当教員の判断に委ねられており、授業内容も試験問題も教員個人の裁量権の中で行われているのが現状で、改革の方向性としては、大学院が教育課程であるとの認識の徹底が最重要と指摘している。
 その上で、専門分野別評価では教育目標・教育内容・教育方法・教育評価などの教育プログラムそのものを評価対象とすることが適当で、ここでいう教育プログラムには教育の目標の達成を可能とするカリキュラムに加え、それを確実に実行できる教育システム、評価システムが含まれ、教育の質保証に直接繋がるものとしている。現在行われている機関別評価は公的性格の大学にとって説明責任。一方の専門分野別評価は質保証を目的としたもので、専門分野ごとに、大学団体・関連学協会主導で行われるべきで、あくまで自己点検・評価を客観的な視点から再評価する外部評価と位置づけ、専門分野別評価を受けるか、受けないかは各大学の判断に委ねるべきで、国主導で義務付けられる認証評価は機関別評価に限定する方が賢明だとしている。
 学士課程(学部)に関しては、専門性についての大方の合意を得た後、大学院とは少し性質の異なる学士課程教育に相応しい専門性を反映させた専門分野別評価のシステムを構築する必要があると指摘している。

JABEE等が目指す方向性

 専門分野別評価の目指すべき方向性に関しては二つの実例を挙げている。その一つがJABEE(日本技術者教育認定機構)の教育プログラム、もう一つが「医学教育モデル・コア・カリキュラム」。JABEEの教育プログラムは、技術系学協会との連携、企業等とのネットワークの中で、世界に通用する多様な能力を持つ技術者の育成を目指し継続的な改善が図られている。認定を希望するプログラムに関しては六つの基準を満たしていることを根拠資料で説明しなければいけない。
 もう一つの医学教育モデル・コア・カリキュラムは基本となる教育内容を提示、教育成果の到達度を全国共通の二種類の共用試験で評価し、大学に対する外部評価と、臨床実習開始前の進級判定に利用されている。これについても関連する各専門分野の学協会が積極的な役割を果たしている。
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