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記事2008年7月23日 2105号 (2面) 
佐藤弘毅氏(日短協新会長)に聞く
専門分野の充実必要
専攻科の生かし方研究、地方自治体との連携も


 今春、日本私立短期大学協会の新会長に就任された佐藤弘毅・目白大学短期大学部理事長・学長に会長としての抱負や短大の将来像などについてうかがった。(編集部)

 川並弘昭前会長が四期八年にわたって私立短期大学のために尽力されました。今後とも短大を揺るぎないものとするには課題も多く、その克服がいかに難しいかを思うと、会長の任にあらずと何度も辞退しました。しかし、私自身、二十八年前、初めて協会の仕事に携わって以来、歴代の会長や諸先輩に教えていただきながら、私学人として育てていただいた。その恩を返すべきではないかとの思いで、会長をお引き受けしました。各支部長や役員の方々と共に、なんとか大役を果たしていきたいと思います。短期大学は今、非常に苦戦しています。
 短大は、もともと職業並びに実際生活に必要な能力を育成することを目的としていましたが、短期という部分がもてはやされ、四年制大学と相似形の課程編成をするようになり、それが当時の国民に支持されたため、本来の短大のあり方とは少し違ってしまったという感じがします。諸外国では、四年制大学とコミュニティーカレッジは、きちんとすみ分けができている。例えば、アメリカのコミュニティーカレッジの使命は大きく三つといわれています。一つは大学への編入教育です。二つめは職業教育、三つめは市民教育で、これはほんとうにカレッジの独壇場です。州政府や自治体もカレッジをサポートし、国民に多様な選択肢を与えています。
 これに比べ、日本の短期大学は特異な発展をしてきました。もちろん、わが国の発展に、特に女子教育に果たした役割は非常に大きい。このことは栄光の歴史であり、誇りです。けれども、もう一つの柱である職業教育という部分の努力が足りなかったのではないかと感じています。
 今、短大の将来を展望するとき、短期大学教育は三つの異なった課程をもって社会に貢献していくと考えています。
 一つは、短期大学士の学位を授与する本科です。現在、本科の卒業生の約五割が幼児教育や介護・福祉などの専門就職です。この専門分野を充実させるとともに、専門就職した卒業生の待遇面の改善を国や産業界に働きかけることも考えています。一般就職をする卒業生には、基礎的な社会人能力をきちんと教育する。このことにも改めて注目しています。二つめは、専攻科です。専攻科の趣旨はさらに深く教授、指導することですが、学士の学位が得られるという役割も担っていますので、専攻科の生かし方を研究することを協会としても提案したいと考えています。三つめは、地域の学習拠点としての役割です。これについては一九八〇年代から繰り返しいろいろなところで語られてきましたが、短期大学全体としての特色が出るほどの高まりは見せていない。最大の原因は、地方自治体等との公的連携など、社会的・法的な枠組みができていないことです。
 ですから、今後、短期大学は、履修証明制度などを活用し、地域のニーズに沿った生涯学習プログラムを開発していく必要がありますし、また、社会人の再教育もやっていかなくてはいけない。
 地方公共団体側は、教育のノウハウも知の資産もある大学・短期大学を活用していただきたい。特に短期大学は全国の中小地方都市に所在していますので、生涯学習センターとして活用できると思います。ただ、その場合、経営的に成り立たないものでは、健全かつ継続性をもって発展することはできません。ですから、地方公共団体は、初等中等教育同様、大学の教育や知の資産を公的なものとして認め、財政支援を含めて、生涯学習を一緒に組み立てていく努力をしていただきたいと思います。
 例えば韓国では、特定産業や地域産業が、必要とする能力を育成する学校づくりに参画しています。こうした取り組みを日本でも行うには、私たち自身の発想の転換、過去の栄光からの脱却、そして新時代に相応しい新たな短期大学を目指さなければなりません。
 今、日短協では、「新時代の短期大学の役割と機能」をとりまとめていますが、それを一つのたたき台として、短期大学が結集し、「短期大学はこういう生き方をしたい」「社会にこんな貢献をしたい」という、私ども自身の意見を政府や中教審にぶつけていきたいと考えています。
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