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記事2008年7月13日 2104号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向【大学院部会】
法学系大学院の様変わりを報告
外国人学生ばかり 研究者養成できず
 中央教育審議会大学分科会の大学院部会(部会長=荻上紘一・独立行政法人大学評価・学位授与機構教授)は、六月三十日に、東京都港区内で委員懇談会を開催した。
 当日は、外国事情のヒアリングに続き、事務局から、博士課程修了者等の諸問題についての論点メモ等が説明された。
 その後各委員からの自由意見に移ったが、法科大学院発足後に法学系の大学院が大きく様変わりした様子などが報告された。「法律学のうち、基礎法学を除き、実定法の領域に来る学生がほとんどいなくなった。オーバードクターの問題も生じないほか、大学院にいるのは外国人学生ばかりという状態で、研究者養成の体制が全くとれていない。多くの国立大学は法科大学院修了者から博士課程に受け入れるようにしているが、研究者となる基礎的訓練は行われていないので事実上不可能だ。また、大学院に留学生しかいないということは、留学生にとって日本人学生と不十分な交流しかできないという状態となる。このため留学生が日本を留学先として選ばなくなると、例えば東南アジアなどへの進出企業にとって、その国の官庁に日本法を知る官僚がいないことは問題であり、国益の問題となる」との危惧が表明された。
 これをきっかけとして、「国立の有力大学がこぞって法科大学院を従来の法学研究科の中に置くやり方をしているのはおかしい。研究者養成は自らの使命であるにもかかわらず、リソースを法科大学院の法曹養成に振り替えてしまっている」「大学院自体の問題ではないが、同様の問題として、薬学部の四年制から六年制への移行に伴い、研究者が少なくなり薬剤師ばかり養成してどうするのか。専門職大学院と普通の大学院のあり方を見直しておかないと、日本の学問の将来が不安になる」「看護の分野であるが、米国で高度専門職業教育を大学院で進める中で、その結果、教員がいなくなったということが既に起こっている」などの意見が相次いだ。
 その他、大学院生に対する経済的援助のあり方、学術図書の刊行助成費の減少傾向についての意見が出た。
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