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記事2008年6月23日 2102号 (1面) 
公立校の適正配置を検討
文科省初中局長が中教審に要請
学校段階間連携も
公立小・中一貫校拡大か来夏までに提言へ
 中央教育審議会の初等中等教育分科会(梶田叡一分科会長=学校法人聖ウルスラ学院理事長)は、就学人口の減少を踏まえた小・中学校の適正配置や、学校選択制、飛び級、小・中一貫教育を始めとする学校段階間の連携・接続等の検討に着手する。これは六月十六日、文部科学省の金森越哉・初等中等教育局長が同分科会に要請したもので、来年夏までに提言をまとめる。小・中学校の設置・運営のあり方に関しては、分科会内に作業部会の設置も決まった。

 金森初中局長が検討を要請したのは、大きく分けて三点。一つ目が、「小・中学校の設置・運営のあり方について」で、学校の適正配置、コミュニティ・スクール、学校選択制について検討する。二つ目が「学校段階間の連携・接続等について」で、学校段階間の連携接続のほか、優れた才能や個性を伸ばす学習機会を検討する。三つ目は「不登校の児童生徒への支援について」。このうち小・中学校の設置・運営のあり方に関しては、今年四月に公表された教育振興基本計画に関する中教審答申では、「地域の実情に応じて、学校の適正配置を進め、教育効果を高める」とされていた。公立小学校をみると、昭和三十三年に約一千三百四十万人を数えた児童数は、平成十九年にはほぼ半減の約七百一万人にまで落ち込んでいる。そうした中でピーク時(昭和三十二年)に二万六千七百五十五校あった公立小学校数は平成十九年には二万二千四百二十校残っており、一六%の減少。中学校についても同様な傾向だ。
 小学校の学級数については昭和三十三年に定められた学校教育法施行規則により、特別の事情がない限り、十二学級以上十八学級以下を標準とする、また義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律施行令では通学距離に関して、小学校にあっては概ね四キロメートル以内、中学校にあっては概ね六キロメートル以内と定められている。こうした規定や地域住民の反対等から学校の統廃合はあまり進んでいないのが実情。
 また先の教育振興基本計画に関する中教審答申は、公立学校の学校選択制についても取り上げており、地域の実情に応じて取り組みを促すよう求めている。学校選択制に関しては就学したい学校について事前に保護者の意向を確認する方式と、保護者に就学校の指定を通知した後、変更を認めるという方式がある。
 形態については六つ程度に分類されており、すでに小学校で学校選択制(入学時)を導入している自治体は全国で二百四十、中学校でも百八十五自治体を数える。さらに小、中学校で実施を検討している自治体もそれぞれ二百前後ある。評価がある一方で弊害の指摘もあり、これまでの取り組みの成果等を検証する。
 学校の統廃合は、学校段階間の連携・接続等とも関連しており、公立の小・中一貫教育校が各地に広がる可能性もある。またそれ以外にも幼稚園(保育所、認定こども園)と小学校の連携、中学校と高校の連携などが検討される見通しで、中高一貫教育に関しては公立学校でも急速に広がりつつあるが、その功罪≠ノついて検証を行う。中高一貫教育をめぐっては、従来からの私立中高一貫校に教育課程上の特例措置が認められないとの問題も生じており、その改善策の検討が同省で進められている。小・中一貫教育(九年間)については、五・四制、四・三・二制、四・五制、二・三・四制などさまざまな学年のまとまりの実践的研究が研究開発学校制度等を使い進んでいる。飛び級に関しては、同一年齢で学級を編成することなどを再検討する見通し。
 不登校児童生徒への支援に関しては、平成十八年度で国公私立小・中学校で十三万人弱の不登校児童生徒数が出ていることから、社会的な自立に向けた支援を検討する。
 この日の初等中等教育分科会の審議では、小・中一貫教育については賛成、学校選択制には反対の意見が公立学校関係者を中心に多く聞かれた。
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