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記事2008年4月3日 2095号 (1面) 
教育振興基本計画 5年間の教育投資総額の記載なし
中教審特別部会が答申審議終了
年度毎に財務省と折衝
私学振興方策は新味欠く
 中央教育審議会教育振興基本計画特別部会(部会長=三村明夫・新日本製鐵株式会社会長)は四月二日、文部科学省内で約一カ月ぶりに開いた会合で、平成二十年度から五年間に重点的に取り組む教育関連施策等を定めた「教育振興基本計画」に関する答申をほぼとりまとめた。今後は、文言の一部修正を行った上で、答申をそのまま第一期の教育振興基本計画として閣議決定する。ただし五年間に政府が教育に投資する予算総額の記述はなく、同計画が閣議決定された後もこれまで同様、教育予算は毎年度、文部科学省と財政当局との折衝の中で決まる仕組みに変更はない。教育関係者の教育予算大幅増額への期待は肩透かしをくらった形となった。

 教育振興基本計画部会は二月二十九日に会合を開いて以降、他省庁との教育関連施策や財政問題をめぐる調整が行われきた。同部会のまとめた答申がそのまま閣議決定されるという方式を取ったため、事前の調整が難航、四月二日の時点でもすべての調整は終了していない、という。この日は初めに三村部会長が部会の審議は本日で終了したいと宣言、出席した十九人の委員一人ひとりから答申案に対する意見を聴取した。
 答申案については、前回での委員発言や他省庁折衝などの結果、前回と比べ変更のあった点が文部科学省から説明された。第二章「今後十年間を通じて目指すべき教育の姿」のうち、(2)の目指すべき教育投資の方向については、前回は何の記載もなかったが、今回初めて記述内容が明らかになった。しかし記述内容はわずか一ページ弱。
 その中では「欧米主要国と比べて遜色のない教育水準を確保すべく教育投資の充実を図っていくことが必要」としながらも、「この際、歳出・歳入一体改革と整合性を取り、効率化を徹底し、またメリハリをつけながら、真に必要な投資を行うこととする」としている。
 こうした記述に片山善博・前鳥取県知事(慶應義塾大学教授)が反発、「財政当局に配慮しすぎだ。調整を行った関係省庁はどこで、どんなやり取りがあったか、プロセスを明らかにすべきで、説明責任を果たしてほしい」と詰め寄った。
 これに対して三村部会長は「(記述内容は)大幅に変わっていない。省庁折衝の結果、悪くなったと思っていない」とし、最終的には部会長預かりとなった。
 また学校選択制の扱いに関して、「公立学校の学校選択制について、資源配分のあり方と、これによる学校改善方策に関するモデル事業を希望する教育委員会で実施することを含め、地域の実情に応じた普及を図る」との記述となっていたことから、バウチャー制の導入や学校選択制の推進とも取れる可能性があると、公立学校関係委員が疑問を表明、三村部会長も部会として十分議論していなかったことから、「宿題として残す」と整理した。
 今後五年間に中心的に取り組む施策を列挙した「基本的方向ごとの施策」では、新学習指導要領の実施に向けた条件整備で具体的追加記載がみられた。さらに留学生交流の推進では二〇二〇年頃の実現を目途に「留学生三十万人計画」を策定すること、認定こども園については、今回の計画期間中のできるだけ早期に二千件以上の認定を目指すこととなった。
 今後五年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策の「施策の基本的方向」を示した行では、「この五年間を高等教育の転換と革新に向けた始動期間と位置づけ、中長期的な高等教育の在り方について検討し、結論を得ることが求められる」と追記している。
 私学振興に関する記述も見られるが、私学助成の推進や学校法人に対する経営支援など目新しい施策や目標に関する記述などがなく、新味に欠ける内容となっている。
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