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記事2008年4月23日 2097号 (1面) 
教育振興基本計画 今後更に後退の恐れ
教育関係者に漂う失望感
各省調整は未了
私学助成「充実」から「推進」にトーンダウン
 中央教育審議会(山崎正和会長)は四月十八日、文部科学省内で開いた総会で、教育振興基本計画に関する答申をまとめ、渡海紀三朗文部科学大臣に手渡した。同省は今年二月の時点まで、中教審の答申をそのまま政府の「教育振興基本計画」として閣議決定する、と中教審委員に説明していたが、この日の総会では、政府としての教育振興基本計画は、中教審答申を基に与党や各省調整を経て策定すると軌道修正を明らかにした。各省との調整では教育投資に絡む事項の後退は必至。財務省は財政再建を理由に教育予算の拡大に強く反対しており、改正教育基本法に裏付けられた教育振興基本計画に大きな期待を寄せていた教育関係者には急速に失望感が広がっている。

 中教審答申は、「教育立国」の実現に向けて、十年先を見通して、今後五年間(平成二十年度から二十四年度)に総合的・計画的に取り組むべき施策等をまとめたもの。
 十年先の教育の姿としては、公教育の質を高め信頼を回復する、高校や大学等における教育の質を保証する、世界最高水準の教育研究拠点を重点的に形成するとともに、大学等の国際化を推進するなどとしている。
 具体的には七十五項目の施策を列挙したが、五年間で達成を目指す数値目標の記載はほとんどない。記述内容が最終段階まで明らかにされなかった答申の中の「目指すべき教育投資の方向」の行(くだり)では、「今後十年間を通じて、必要な予算について財源を確保し、欧米主要国と比べて遜色のない教育水準を確保すべく教育投資の充実を図っていくことが必要」と指摘。
 しかし同時に「この際、歳出・歳入一体改革と整合性を取り、効率化を徹底し、まためり張りを付けながら、真に必要な投資を行う」としている。
 私立学校に関しては、その自主性を尊重しつつ、私立学校の教育研究に対する支援を行い、また学校法人の自主的な努力による健全な経営の確保を促す観点から、学校法人に対し、経営に関する指導・助言等の支援を行うとともに、積極的な財務情報等の公開を促すとしている。私学助成は推進する、との記述。
 今年二月末の時点の答申の案文では「私学助成を更に充実」と記載されていたが、その後の各省調整で「推進」に後退した。この日の総会では全私学連合代表を務める安西祐一郎・慶應義塾長も再度、閣議決定を前に教育投資充実に向けた努力を文部科学省に要請。また委員からは福田首相が提唱した「留学生三十万人計画」の実現のための予算は既存の高等教育予算からではなく特別に手当てするよう求める意見も聞かれた。これに対して渡海文科相は、留学生問題に関しては、日本のトップリーダーが発言したことで、責任を持って取り組む意向を明らかにし、教育振興基本計画については「与党の手続きも、各省の調整も終わっていない。頑張りたい。計画は指標になるもの」との考えを示した。
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