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記事2008年4月13日 2096号 (1面) 
小学校の理科教育改善急務
科学技術振興機高ェ「提言」
教員の62%が「理科は苦手」
教員採用試験に実験実技必要

 独立行政法人科学技術振興機構の「理科教育支援検討タスクフォース小学校分科会」(主査=山極隆・玉川大学学術研究所教授)は、三月三十一日、「学校と社会が一体となって小学校理科教育の新たな展開を」と題する報告書を公表した。
 児童生徒の理科離れや国民の科学技術への関心の低さが指摘されている中で、我が国の理科教育が抱える課題の解決には、とりわけ小学校の理科教育の改善が必要との観点から、解決方策を提言したもの。
 報告書によると、小学校教員は中学校のように専科教員ではないこともあり、六一・九%の教員が「理科は苦手」と回答。理科の課題については、「実験や観察の準備・片付けに手間がかかる」(六六・〇%)、「実験に失敗するなど、教科書通りに教えられない」(五一・二%)を挙げた教員が半数を超えていた。(出典=JST理数大好きモデル地域事業事前アンケート)
 また「力を入れて研究している教科」に理科を選んだ教員はわずか五・七%に過ぎなかった。(出典=文部科学省「義務教育に関する意識調査・平成十六・十七年度」)。
 さらに文部科学省の平成十五年度小・中教育課程実施状況調査結果によると、児童生徒の「理科の勉強は好き」という割合は高かったものの、「理科の勉強が生活や社会に役立つ」と答えた児童生徒の割合は、国語や外国語を大きく下回る状況だった。このほか教員の多忙さから教材開発などに時間をかけることもできない。
 こうしたことから同報告書は、理科に苦手意識を持つ教員が多く、子どもたちに理科の面白さが十分伝えられていていない、教員をサポートする仕組みも不十分などと課題の背景を分析。
 そうした課題の解決には、地域拠点を創設、教員間の人的ネットワークの形成や理科指導のためのアドバイザー配置、教員の加配の検討、大学生や退職教員らによる理科教育支援、十分な実験実習を行うため大学の教員養成課程における単位数の充実、実験実習能力の養成に十分配慮した講義内容、実験実技を取り入れた教員採用試験の実施、特別免許状等の活用により理系出身者の小学校教員への登用推進、理科教員の顕彰制度の創設等が必要と提言している。
 また理科教育が抱える課題を包括的に解決していくためには、現在以上に明確で具体的な国家戦略の下に推進していく必要があるとし、法律の制定を含めた、抜本的かつ迅速な対策が求められている、と強調している。
 さらに同分科会では、改善方策として挙げた理科教育支援拠点校の設置支援、教員間の理科関連ネットワークの育成、教員免許更新制を活用した現職教員研修の充実、理科教育の向上に貢献した教員等の表彰制度の創設等を科学技術振興機構に求めている。同機構は昨年九月に「理科教育支援センター」(センター長=有馬朗人・元文部大臣)を創設、理科教育支援事業を展開して行く意向。





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