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記事2008年3月3日 2092号 (3面) 
私立短大の挑戦 (3) ―― 山梨学院短期大学
現代GP 『県や栄養士会と連携した地域食育推進の取組』
食物栄養科と保育科学生が食育推進ボランティア
「やまなし食育推進計画」に協力

 私立短期大学を取り巻く環境が厳しさを増している中で、ユニークな教育活動を行うなどで評価を高めている短期大学の取り組みを、文部科学省の平成十九年度「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」「特色ある教育ニーズ取組支援プログラム(特色GP)」に採択された中から、幾つか紹介していく(編集部)。


 「食」を食物栄養科が、「育」を保育科が担当し、二つの学科の学生が「食育」に共に取り組むというのが、山梨学院短期大学(三神敬子学長、山梨県甲府市)の平成十九年度現代GP「県や栄養士会と連携した地域食育推進の取組―食育推進ボランティアを通じた学生の食育実践力の育成と地域貢献」だ。テーマ分野は地域活性化への貢献(広域型)である。
 山梨学院は、昭和二十年代からの農繁期の協同炊事の手伝いに始まり、生活習慣病予防講座など長年地域の食育に取り組んできた。そうした実績の積み重ねもあって、平成十九年三月、同短大に山梨県と山梨県栄養士会から、食育基本法に基づく「やまなし食育推進計画」のため、食育推進ボランティアの協力依頼が来た。
 そこで従来の卒業必修科目であった「社会体験講座T」を再編、十九年度から「社会体験講座T・食育推進ボランティア」を設置、一年次・二年次の二年間で一単位の必修科目とした。教育目標は、「食育実践力の育成」「地域への貢献感の醸成」である。
 カリキュラムとしては、一年次は準備期にあて、地域の一員としての自覚と期待を教育目標に、ボランティアの意義に関する学習、社会マナーの実践的学習、地域ボランティアの実施などを行う。二年次には、専門性を生かした食育実践力の育成を目標に、社会マナーの実践的学習、メタボリックシンドローム予防のための支援・技術の学習、食育指導案作成・教材の作成方法の学習、県の食育推進ボランティア研修、食育推進ボランティア計画・実施などを行う。実際に食育推進ボランティアに行くのはこの二年次である。
 昨年十月には、県内十一カ所の保育所から食育推進ボランティアの依頼があり、既に七カ所で活動した。一カ所に派遣する学生数は食物栄養科と保育科合わせて約十人。
 保育所等での活動時間は約一時間だが、事前に、食物栄養科と保育科の学生が、専門知識やアイデアを持ち寄って、紙芝居やパネルシアター、エプロンシアターなどの教材を作る。保育所等へはそれを持参して、分かりやすく子供たちに食べ物の話をする。例えばニンジン嫌いの子供にニンジンの中にどんな大切な栄養が含まれているか、といったことを理解してもらうなどだ。
 ただ、幼い子供たちはすぐに飽きてしまう。そこで、子供の扱いが上手な保育科の学生が、上手に子供の関心を引きつけたり、適度な休憩をとったりして飽きさせない工夫をするなどして、二つの科の学生が協働することでスムーズな活動ができる。そのことで、それぞれの科の学生が互いに学びあって食育の実践的な力を高め、同時に地域への貢献もできるという。
 受け入れ先の保育所等からも好評で、子供たちも喜んでくれた。学生の反応もいい。なかには「楽しい。また行きたい」と言う学生もいる、と赤井住郎・食物栄養科長は話す。
 二十年度は、山梨県栄養士会が主催するイベントに参加を予定している。県からは、地方の小さな保育所では栄養士がいないところも多いので、それらの小規模保育所等にもボランティアに行ってほしいとの要望があり、そのニーズにも応えていきたいという。

県内唯一の栄養士養成校
学生支援GP養護施設の子供に高等教育を

 このほか、従来から実施していたメタボリックシンドローム予防講座、小児糖尿病サマーキャンプの栄養教育、NPOと協力する自然体験キャンプでの児童料理教室の開催、腎臓病のための料理講習会、養護施設の子供たちのための料理教室、学園祭での「食育ひろば」などを予定している。
 情報発信もする予定で、ホームページの開設のほか、キャンパス内にある「エフエム甲府」のスタジオを活用したFM放送での食育、レシピ集の作成も計画している。
 山梨学院短大の食物栄養科は県内唯一の栄養士養成校であり、保育科も県内最大の保育者養成校である。学生の卒業後の進路は両科ともほとんどが就職。卒業生も広く県内で活躍しており、地域からの評価は高い。しかし、それに甘んじることなく、質の向上にこれからも努めていきたいという。
 今回の現代GPと同時に、十九年度学生支援GPとして、山梨学院短大の「短期大学を拠点とした長期的自立支援の取り組み」が選定された。これは進学意欲のある養護施設の子供に高等教育の道を開こうというものだ。授業料免除で二名を受け入れる。ただ、短大を卒業させるだけでは自立が難しい面もあるため、その子供が養護施設にいる段階から、短大卒業後社会人として安定するとみられる三十歳まで、長期間にわたり、経済的支援、就職支援、心理的支援をしていこうというもので、全国的にも珍しい取り組みだといえよう。

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