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記事2008年3月3日 号 (1面) 
重点施策に「私学助成」
具体的目標の記述はなし
中教審・教育振興計画部会  答髄f案を審議
学校選択制には反対の声
中央教育審議会教育振興基本計画特別部会(部会長=三村明夫・新日本製鐵代表取締役社長)は、二月二十九日、都内で部会を開き、教育振興基本計画に関する「答申素案」を審議した。同部会では今月中にあと一、二回審議した後、答申をまとめる。答申は三月中にもそのまま政府の「教育振興基本計画」(平成二〇―二四年度)として閣議決定される予定だが、答申素案では、私学助成について「更に充実」「充実を推進する」などの記述はあるものの、具体的目標は明記されていない。教育投資の方向性自体が空白のままで、近く本格化する教育振興基本計画をめぐる他省庁との調整では財務省を中心に教育投資拡大へ強い抵抗も予想され、教育予算の拡充は今月中に山場を迎える。

 「答申素案」に記載された重点的に取り組む事項のうち、私立学校の教育・研究等の振興に関係する主な施策を拾うと――。高等教育関係では、国公私を通じた大学間連携による教育研究環境の充実や地域貢献の取り組みを二百件程度支援。また国公私立を通じ複数の大学等の学部や研究科等を共同で設置できる仕組みを平成二十年度中に創設する。平成二十三年度までに世界的に卓越した百五十程度の教育研究拠点形成を目指し重点的支援を行う。大学等への社会人学生の大幅拡大を目指し必要な環境の整備・充実を支援する。実践的な職業教育を支援する。留学生三十万人受け入れ計画の策定・実施等を挙げている。私立高校等に関しては、幼稚園の就園奨励費、幼児教育無償化の歳入改革に合わせた総合的検討、就学援助、奨学金、私学助成、税制上の措置等による教育費負担の軽減を通じ教育への機会保障を図るなどとしている。
 八十一項目からなる総合的・計画的に推進する施策の中には、「私立学校の振興策を充実する」との項目があるが、これまで以上に踏み込んだ施策の記述はない。
 高等教育に関する公財政支出に関しては、二月八日の同部会で安西祐一郎・大学分科会長(慶應義塾長)ら高等教育関係者四人の連名で、社会人の大学等への受け入れ拡大等の必要性を指摘して現在の二倍強に当たる五兆五千億円程度規模への拡充を求めた意見書が提出された(本紙2月13日号参照)。この日の部会では前回欠席の安西委員が意見書提出は大学分科会内で教育振興基本計画に関する議論が先送りされてきたため、止むを得ず提出した経緯を報告。意見書で求めた公財政支出拡大は、大学経営、ましてや私立大学経営困難校を救うためのものではなく、質保証は厳しく実施すべきで、我が国は二十五歳以上の大学入学者が先進国中、際立って低いことなどを説明、財政を含め社会人が大学等で学び直せる仕組みづくりを改めて要望した。
 また委員からは答申素案に様々な意見が出されたが、今後実施する施策の「公立学校の学校選択制について、児童生徒数等を勘案した予算配分による学校改善方策に関するモデル事業の実施を含め、地域の実情に応じた普及を図る」との項目については、公立学校関係委員から、「学校選択制は地域の崩壊に繋がる。止めて頂きたい」と強い反対の声が上がった。
 社会人の教育現場での教員としての登用拡大についても、中教審教員養成部会長の梶田叡一委員が、ほとんど議論しておらず問題があると反対の意向を表明したが、三村部会長は、「教員の職場を奪うものではない。財界は喜んで支援する。私自身は賛成」と述べるなど、なお調整が必要な課題を残す結果となった。企業に教育への更なる財政支援を求める意見も出されたが、日本経済団体連合会副会長の三村部会長は、財政支援は難しいとしたうえで、経団連と対話の機会を約束した。

重点的に取り組む施策は9本柱

 答申素案では、今後五年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策については、社会全体で教育の向上に取り組む、教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し社会の発展を支えるなどの四つの基本的方向を柱に、合わせて八十一項目の施策を列挙している。また特に重点的に取り組むべき事項として、(1)確かな学力保証(2)豊かな心と健やかな体の育成(3)教員が子ども一人一人に向き合える環境づくり(4)手厚い支援が必要な子どもの教育の充実(5)地域全体で子どもたちを育む仕組みづくり(6)キャリア教育・職業教育の充実と生涯を通じた学び直しの機会の充実(7)大学等の教育力の抜本的強化と質保証(8)卓越した教育研究拠点の形成と大学等の国際化の推進(9)安全・安心な教育環境の実現と教育への機会の保障の九項目を挙げている。
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