こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2008年2月13日号二ュース >> VIEW

記事2008年2月13日 2090号 (1面) 
今後5年間の重点施策を審議
中教審・教育振興基本計画特別部会
大学委員公財政支出増を要請
地方分権尊重、職業教育充実などの要望も

 政府が平成二十年度から五年をかけて総合的・重点的に取り組む重点教育施策等の検討を進めている中央教育審議会の教育振興基本計画特別部会(部会長=三村明夫・新日本製鐵代表取締役社長)は二月八日、都内で「答申の構成案」「今後十年間を通じて目指すべき教育の姿」「今後五年間に特に重点的に取り組むべき事項」の各素案の審議を開始した。しかし意見続出。三月末までの答申には紆余曲折が予想される。

 この日提示された「答申の構成案」等は、田村哲夫副部会長(渋谷教育学園理事長)を主査とする作業部会が中心となって検討、作成したもの。
 このうち「今後五年間に特に重点的に取り組むべき事項」については、同部会が昨年まとめた「検討に当たっての基本的な考え方」に盛り込んだ重点的に取り組むべき事項七十項目を八項目に整理したもので、国、地方公共団体、学校、保護者等の役割分担などを明示したこと、大学等教育に関しては世界をリードする大学の形成ばかりでなく、個性化・特色化を進め国民全体にプラスになる存在とする、などが特徴。
 重点的に取り組むべき事項を八項目にまで整理したことについて、三村部会長は「一つの議論の成果」と語り、重点化の苦労を窺わせたが、さらにメリハリ付けの作業を続けていく考えを明らかにした。また今後計画に盛り込む数値目標作りも難しい作業になることは必至で、三村部会長は改めて中教審の各分科会での検討を要請した。
 この日の部会では、教育振興基本計画に関して四人の大学関係委員から大学教育の転換と革新を可能とする高等教育への公財政支出の飛躍的拡大を求める意見書が提出され、その内容が説明された。また地方公共団体関係委員からは地方の実情や分権改革への配慮を求める意見、初等中等教育関係者からは、教員が子供と向き合う時間を確保できるよう更なる学級定員削減に向け四十人学級見直しの展望を盛り込むよう求める意見、専修学校関係者から教育基本法に新たに職業教育が規定されたことから関連施策の充実の重要性を指摘する意見等が相次いだ。
 このうち大学関係委員四人(安西祐一郎委員、郷通子委員、金子元久委員、木村孟委員)が提出したのは「教育振興基本計画の在り方について――大学教育の転換と革新を可能とするために」と題する意見書。
 大学関係者は、平成十九、二十年度の政府予算(案)で二年続けて大学への基盤的補助金等が前年度比一%(以上)の削減措置を受けたこと、近年躍進著しいインド、中国では国を挙げて高等教育への重点投資を続けていることなどから、国際競争時代を迎えた我が国の大学の将来に強い危機感を抱いている。
 この日、欠席の安西祐一郎・中教審大学分科会長(慶應義塾長)に代わって、郷通子委員(お茶の水女子大学長、中教審大学分科会副分科会長)、金子元久委員(東京大学大学院教育学研究科長)が、意見書の趣旨や内容を説明したが、このままでは日本の体制が揺らぐのは必至と強い危機感を表明、国際競争に伍しつつ、幅広く知的市民を育成することを可能とする教育研究環境の形成にむけ、アメリカを目安に約二十年後の二〇二五年を目標に、大学教育に関し実現すべき展望を提示し、そのために必要な投資額の教育振興基本計画への反映を求めた。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞