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記事2008年2月13日 2090号 (3面) 
私立短大の挑戦 (2) ―― 昭和女子大学短期大学部
現代GP『「つながる」生涯学習の実践的キャリア教育』
文化創造学科 寸劇作りなど協働体験型プログラム通じ
社会人としての基礎力育成

 私立短期大学を取り巻く環境が厳しさを増している中で、ユニークな教育活動を行うなどで評価を高めている短期大学の取り組みを、文部科学省の平成十九年度「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」「特色ある教育ニーズ取組支援プログラム(特色GP)」に採択された中から、幾つか紹介していく(編集部)。


 実践的総合キャリア教育の推進をテーマ分野として、平成十九年度現代GPに採択された昭和女子大学短期大学部(島田淳子学長、東京・世田谷区)の取り組みは、『「つながる」生涯学習の実践的キャリア教育―専門学習を活かして基礎力・表現力・行動力・持続力を磨く協働体験型プログラム―』(以下、協働体験型プログラム)。
 近年、学生が、授業では正解だけを教えてもらいたがる、自分が何が好きなのか分からない、コミュニケーションが取れない、協同作業が苦手、といった声をよく聞く。
 こうした学生に、社会人として生きていくための力を身につけさせようと、平成十八年度に開設したのが文化創造学科である。
 担当の木村信之教授は、「社会が求めているのは、新しい価値を生み出す力であり、多様な視点だと思う。そのためには学生たちに基礎的な力をつけ、次の段階へステップアップしていく力をつけたい」と話す。
 文化創造学科には、建築・造形デザイン・インテリア、映像メディア、文学・文化、コミュニケーション、ファッション・くらしという五つの分野に二百以上の科目が設置され、それらを学生が自由に選択・履修できる。それぞれの領域にはコーディネーターとなる教員を配置し、専門科目の履修相談・指導を行っている。もともとクラス担任制(一クラス約五十人)をとっているため、クラス担任も学生の学習面・生活面の相談を受けるなど、一人ひとりの学生に対する十分な支援体制が整っている。
 多彩な科目とリンクして実施されるのが、現代GP「協働体験型プログラム」。一・二年生が一緒に年間を通して活動するグループワークである。中軸となるのは六月の三泊四日のワークショップでの作品づくり、十一月の学園祭「秋桜祭」での発表、三月の地域での作品の一般公開だ。
 平成十九年度の三泊四日のワークショップは、約三十人が一グループとなり、東明学林と望秀学寮の二つの学寮で実施された。
 東明学林では六つのグループが、それぞれ十五分程度の寸劇を作って演じた。ただ役を演じるだけでなく、企画・脚本づくりから、舞台装置、衣装、音響、照明も学生間で役割を決め、手分けして担当した。最終日には舞台発表、講評会も行った。
 望秀学寮では、ビデオでのドキュメンタリー制作、紙芝居制作、絵本作り、Tシャツ作り、デジカメ写真のコラージュ制作などが行われ、こちらもグループの学生たちが、企画・制作・発表まで一貫して行った。
 ここでのグループワークで、協力して物事を完成させるということを初めて体験する学生もいる。リーダーシップをとる学生もいれば、地味な作業を黙々とこなす学生もいる。この体験で自分の得意なこと、できること、好きなことを知る学生もいる。「初めは行くのを嫌がっていた者も、帰るころにはもう一度行きたいと言います」と木村教授。それだけでなく「自分の役目を果たしていくことでグループの中での自分の居場所を見つけていく」という。
 大学祭ではワークショップをもとに、発表・展示する。学内発表だけではなく、学年末には、地元、太子堂の商店街と協力し作品を一般公開するほか、FM世田谷、東急ケーブルテレビなどとも連携する予定だ。
20年度からテーマごとのゼミ演習開講
インターン制度導入も
 十九年度は「協働体験型プログラム」は課外活動だったが、二十年度からはテーマごとのゼミ演習を開講し、この中に「協働体験型プログラム」を組み込み一単位とし、作品づくりを行う。一つのゼミは約二十人の学生で構成する予定だ。
 インターン制度も二十年度から導入する予定だ。これは、財団法人世田谷トラストまちづくりが用意するインターンプログラムと連携し、さまざまなまちづくり現場でボランティア活動する取り組みである。狙いは、学生が自ら働きかけ主体的に活動すること、そのための場の提供である。計画の作成から、実習先とのコンタクト、実習、報告まで、学生自身が自主的に行わなければならない。実習時期は夏休み期間中の一週間程度を予定している。
 このほか、学外でのフィールドワークや専門家による講演会も実施する。十九年度は現代GP特別講座として、演出家・映画監督として活躍する奈良橋陽子氏、黒河内宏昌・サイバー大学准教授、アジアジャーナリストの日暮高則氏、一級建築士事務所代表の高橋牧雄氏などを招いた。また、既に「協働体験型プログラム」専用のホームページも立ち上げている。育成しようとしているのは、「課題を発見する力と解決する力」「企画する力と交渉する力」「他者と調和する力と集団をまとめあげる力」。取り組み名称の「つながる」とは、世代を超えて「つながる」力、将来と「つながる」力、大きな自信に「つながる」力、社会の中で自分を生かすことに「つながる」力の意である。

協力して物事を完成させることで自分の得意分野を知り、居場所を見つける

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