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記事2008年12月23日 2121号 (1面) 
中央教育審議会大学分科会開く
大学の量的規模検討
私大から意見聴取「臨時定員減必要」
 中央教育審議会大学分科会(安西祐一郎分科会長=慶應義塾長)は、十二月十六日、文部科学省内で会合を開き、大学の量的規模のあり方について、委員の黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長と日本私立学校振興・共済事業団の澤田裕理事から意見や経営状況の実情を聴取し、定員管理のあり方などについて審議した。この中で黒田氏は国立大学と大規模私立大学での定員超過が地方の私立大学の学生確保を難しくする要因のひとつとなっており、入学定員の取り扱いの厳格化が必要としたほか、地域振興に不可欠な私立大学については入学定員の範囲内で募集定員を決められ、また補助金についても機械的に削減しないなど、きめ細かな取り扱いがされる「臨時定員減」を認めるよう要請した。さらに地域での大学間連携の重要性を強調、大学分科会で大学の機能別分化と大学間ネットワークの促進策の提言を求めた。黒田氏はまた、首都圏等で工場等制限法が撤廃され大学の定員が増加したことから、根強い東京志向の中で地方では学生の地元残留率が低下していると指摘、加えて我が国の大学は社会人の再教育(の機能)をどう取り入れていくかが課題で、留学生などを考えると日本の大学数は決して多くない、と述べた。一方、澤田理事は、大学法人の負債は減少しているものの、施設更新は進んでおらず、補助金が伸び悩む中で学生納付金に大きく依存した収入構造が限界に来ている点などを指摘した。
 その後、大学分科会の委員からは一極集中ではない日本全体のレベルアップには地方小規模大学が必要で、コストのかさむそうした大学への基盤的経費補助のきめ細かな配分基準を求める意見や、大学院や留学生受け入れの経費が大きく学部生の学納金に依存している実態、国公私立の設置形態で大きく状況が異なることから設置者別議論の必要性が指摘された。
 高等教育の量的規模や定員のあり方等に関しては今後、二つのワーキンググループが大学分科会の中の作業部会の下に設置され、大学進学率の国際比較や地域分析、社会人や留学生の大学人口の見込み、近年の大学拡充の傾向等の分析などを進めていく。この日の大学分科会ではまた大学の機能別分化と大学間ネットワークの構築の問題も取り上げられ、「地域における必要な人材育成システムは大事」「大学の機能別分化のねらいは何か。大学の個性化とどう違うのか」「地域のニーズを見つけることが機能別分化だ」などの意見が出された。文部科学省の玉井日出夫総括審議官は、「国は現在、政策として機能別分化を持っていないが、今後、(国の政策として)機能別分化を取っていいのか、取るならどんな方法があるのかの議論を」、と要請した。
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