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記事2008年12月23日 2121号 (2面) 
課題山積の株式会社立学校制度
特区評価・調査委文科省が実態報告
開校3年目で学校経営断念
18社中15社が学校部門赤字
 政府の構造改革特別区域推進本部の評価・調査委員会の第七回教育部会が十二月十八日、都内の内閣官房地域活性化統合事務局で開かれ、文部科学省から、学校設置会社による学校設置事業に関する今年度調査(書面・聞き取り)結果についてヒアリングを行った。
 書面調査は高校十九校、大学・大学院六校など合わせて二十七校を対象に今年十月から十一月にかけて、また実地調査は高校等二十校を対象に二十度中に適宜実施された。
 文部科学省の報告によると、二十年度開設校および調査票等未提出校を除く十八校中十一校が定員充足率五〇%以下という大幅な定員割れの状態にあり、十八社中十五社で学校部門の収支状況が赤字で、開校三年目で学校経営を断念し、来年度から学生募集を停止することを決めた会社が現れたことや、教育研究面でもメディア教材の添削指導が不十分、教室や図書館の広さ、図書数など教育活動に関する環境整備が不十分、大学等の教員の研究時間が皆無に等しい事例が見られた、セーフティーネットとしての役割が期待される認定地方公共団体が、学校経営存続の危機にも積極的な対応をとらなかった事例があるなど様々な課題が明らかになった。特に経営面では、十三の地方キャンパスをすべて閉鎖し本校一校に集約することを決めた大学があり、また開校三年目に設置形態を学校法人に変更した大学があった。このほか教職員がボランティア的に学校経営に携わり人件費が全体で百四万円と極端に少ない例、学長の人脈で採用されている教員が極端に低い給与(平均年収約百六十万円)で勤務している例も見られた。
 こうした結果から、同省では経営面、教育研究面等で課題が多く、株式会社による学校設置を全国展開する可能性を検証する段階にはない、引き続き検証・分析が必要と結論付けている。
 また同省からのヒアリングでは、「高校等における外国留学時認定可能単位数拡大事業」(外国における履修を国内の高校での履修とみなして校長が認定できる単位数を現行の三十単位から三十六単位に拡大する)も取り上げられた。今年十月の文部科学省調査結果では、単位の認定方法等に特段の問題は認められないが、適用件数が少なく、検証が不十分で全国展開の弊害の有無の判断は時期尚早としている。同特例が実施されているのは広島県一県で、適用対象校は県内の私立高校六校、特例措置が適用された生徒は十一人のみ。同教育部会では一月十五日に平成二十年度評価意見の取りまとめを行い、その意見を評価・調査委員会に提出、一月下旬には同委が二十年度評価意見を取りまとめ、構造改革の特区推進本部の麻生太郎本部長(総理)に提出する。二月中旬以降に閣議決定の見通し。
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