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記事2008年12月13日 2120号 (1面) 
私学振興全国大会開催
私立高校等に対する国庫補助制度の堅持拡充決議
私立学校の保護者 教育費負担は限界
教基法の私学規定、実効あるものに
日本私立中学高等学校連合会、日本私立小学校連合会、日本私立小学校中学校高等学校保護者会連合会の私学三団体は、十二月四日、都内の東京都日比谷公会堂で「私学振興全国大会」を開催した。全国から二千人を超える私学関係者や保護者が出席して、与党・自由民主党の国会議員に私学助成の拡充、保護者の教育費負担軽減等を要請した。

 近藤彰郎・日私中高連副会長の開会の辞に続いて、主催者を代表して挨拶に立った吉田晋・日私中高連会長は、「子供たちがわが国の伝統や文化を正しく理解し受け継ぎ、社会の健全な担い手として成長するには学校教育において目的は同じであっても多元的なプロセスが用意されている必要がある。私立学校は正にそれぞれが多様な教育の展開を通じて、これからの国や社会の各分野を先導し民主主義を維持発展させる人材の養成に当たっている。公立学校と私立学校とが並立し互いに切磋琢磨し公教育に貢献する現在の姿こそが教育を受ける子たちにとって望ましい形。学校教育に対して財政支援し振興を図ることはいわば社会制度の基本を維持しわが国の民主主義を発展させることに繋がるものと信じている」と述べた。
 その上で私立学校の運営に要する経費の大半は、保護者の負担する納付金によるもので、その負担も限界とし、国には平成二十一年度政府予算で私学助成予算の拡充を、また改正教育基本法に規定された私立学校の振興や教育振興基本計画を実効性あるものとするためにも私学助成予算が減額されないよう出席の与党国会議員に要請した。
 続いて新延克己・日私学保連会長は、「私立の保護者の最大の関心事は子供たちの教育環境の充実と学納負担金の軽減。現在、私立学校の保護者の負担する教育費は高校では公立学校の五・六倍にも及び、経済的負担は限界に来ている。教育に対する公費支出の公私間格差是正を通じ、それぞれの私立学校が特色ある教育を一層充実できる制度、環境の整備、保護者納付金の軽減を心から願っている」などと語り、平成二十一年度私学振興予算の更なる充実に向けた格別な支援を国会議員に要請した。
 大会では、さらに私立小・中学・高校に学ぶ百三十万人の児童生徒の保護者を代表して森本雅枝さんが、保護者の願いとして、「公立学校の五・六倍もの学納金負担は限界に来ている。この原因は子供たちの教育に係る費用に対して公立と私立とでは公費の支出に著しい格差があるため。高校では公立学校には私立の三倍もの公費が支出されている。これでは教育費の公私間格差は広がるばかりで、教育の機会均等、学校選択の自由実現は程遠いものになる」と語り、保護者の教育費負担の公私間格差是正と子供たちの教育環境の一層の充実のため、平成二十一年度政府予算での私学助成予算の拡充を要請した。保護者の願いはその場で渡海紀三朗・元文部科学大臣に手渡された。
 また私立高校等に対する国庫補助制度の堅持・拡充、都道府県私学助成事業に対する国の財源措置の拡充の実現、税制上の軽減措置等の新たな方策の検討などを求めた決議を出席者全員の総意として採択、馳浩・自由民主党文部科学部会長に手渡された。
 最後に日私小連の平野吉三会長が、「日本が国際社会で存在感を示していくには国民一人ひとりの知的能力を高めていくことが大きな課題。そのためには私学にも手厚い国庫助成を頂いて、私学の子供たちもこの国を最も支える一人の人材になることをここで確認させて頂きたい」と語り、私学教育充実への新たな決意を語った。

現職の塩谷立・文科相も出席

 今年の大会には代理を含め百人を超える国会議員が出席した。このうち塩谷立・文部科学大臣は、挨拶の中で「一昨年の教育基本法改正により法的に私学助成が明確になった。今年は教育振興基本計画をはじめて策定した。その中においても私学の振興をしっかりしていく、特に公私の格差をどうするかといった問題に文部科学省としても努力していくことを明確に謳った。厳しい時代だからこそ教育が大事だと国民にご理解頂く中で教育予算を確保して子供たちが安心して素晴らしい教育を受けられることを目指していかなければならない。とくに欧米先進国と比べ教育費支出が少ない分、家計負担が多くなっている。文部科学省としても教育費の在り方を明確にして、私学助成の増額に努めていく」との考えを明らかにした。また渡海紀三朗・自由民主党文教制度調査会長(元文科相)は、「来年度の予算に関して状況は厳しいが、公立、私立ではなく、大事なことは日本の教育をどうするかで、社会資本として整備しなければいけない。皆さんの期待に応えられるよう頑張りたい」と語った。続けて馳浩・自由民主党文部科学部会長は、「私学の経営者は私財を投げ打って、沢山の先生方に協力を頂いて今日まで経営の努力をしてきた。来年度は進学者が大きく減る。深刻な経営状況の中で足を棒にして受験生を探し回っている。そうした実態を踏まえ実のある予算にしていくために共に戦っていくのだ、ということで皆さんにも具体的行動をお願いしたい」と語った。
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