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記事2008年11月3日 2114号 (1面) 
大学設置審査の現状を憂慮
大学分科会
納谷大学設置分科会長代理が問題点報告
委員から規制改革等への不信感次々と
 中央教育審議会の大学分科会(分科会長=安西祐一郎・慶應義塾長)が十月二十九日に文部科学省内で開かれ、大学教育の国際的な質保障の観点等から、大学設置基準と設置認可の在り方が議論された。
 この日は、大学設置・学校法人審議会の納谷廣美・大学設置分科会長代理(明治大学長)が出席し設置基準と設置認可の現状と課題を報告した。
 納谷会長代理の報告によると、大学設置にかかわる申請が多様化する中で、規制緩和から設置審査内規が廃止され、定量的基準がなくなったため、大学人の常識からすれば不適切と思える申請についても、設置基準に具体性がないため、最終的に「不可」とするには明確な根拠を示しがたい状況となっている。また届け出による学部の開設等が可能になったことから届け出制の趣旨を逸脱するようなものも出て来ており、さらに審査期間の短縮により十分な審査が難しくなっているなどの問題点を指摘、大学設置審査をめぐる現状への強い憂慮を表明した。
 その後、大学分科会委員との間で意見交換が行われたが、委員からは、「設置認可に対応する認証評価がない」「構造改革特区で設置された大学に関して責任のある地方自治体が学校の実態を把握していない」「校地・校舎を借用している大学では教育研究経費が賃借料に回ってしまっている」「専門職大学院は問題が多い。専門学校と変わらない。制度そのものに問題がある。大学院という枠でいいのか」「問題があっても(改善を要する)留意事項付きで認可される。しかし(問題が改善されない期間)学生は大きな不利益を被っている」などの意見が続出。そのほかにも法科大学院、教職大学院、通信教育課程の最近の大学設置認可の問題点が委員から堰(せき)を切ったように出された。特に専門職大学院の現状等については、これまでも大学設置・学校法人審議会の会長等がしばしば問題点を指摘していた。
 安西分科会長も「委員がこれだけ設置審査に尽くしているのに、どうしてこういう状況になるのか。専門職大学院、通信制教育等は構造改革が必要だ。そうでないと委員の不信感は拭えない。新しい形で出発できるようにしたい。文部科学省もそれでよいか。念を押しておく」と語り、抜本的改革がもはや不可避であることを強調した。同省も改革に取り組む意向。
 中教審の大学分科会では引き続き大学設置・学法審と協議を続ける意向。納谷会長代理も大学設置・学法審で審議し、大学分科会に問題提起していきたいと語った。
 このほかこの日の大学分科会では、「学士課程教育の構築」に向けた答申案について、内容は変えず、財政支援に関する記述を集約したことや、カタカナ語を日本語に改めるなど一部修正を加えたことなどが説明され、了承された。
 この答申案については、次回以降の中教審総会に提出される。また中教審法科大学院特別委員会の中間報告「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について」が説明されたが、委員からは「法学部は法科大学院の予備校になってしまう」「国は(専門職大学院のうち)なぜ法科大学院にだけコミットするのか。行政介入で問題だ」との意見が出された。同委員会の木村孟座長代理も「三年しかたっていないが、質については抜本的な改善策が必要だ」と、また安西分科会長も「(問題の)根は深い」と語った。
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