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記事2008年11月3日 2114号 (4面) 
ユニーク教育 (185) ―― 宝仙学園中学・高等学校
教師の責任は生徒が学ぶ権利を保障
探求型の学びの授業導入

関谷校長


草川副校長

 宝仙学園中学・高等学校(関谷五郎校長、草川剛人副校長、東京都中野区)・女子部の高校TBの日本史の授業は、近代産業の発展の産業革命から始まった。
 草川副校長は、教科書と草川副校長作成のレジュメに沿って、生徒にレジュメの空欄を埋めさせていく。分からないと教科書を参照し答えさせる。なぜ、その答えになるのか、何度も質問する。徐々に生徒たちは授業に引き込まれていった。
 「重工業の発達」の個所になると、コの字型の机の配置から四〜五人のグループになるように変え、まず教科書の該当部分を読ませた。そして、レジュメの空欄をグループで相談し、答えを黒板に書かせた。最後に草川副校長が正解を出し解説を行っていく。
 同校は今年度から、探求型学びの授業≠導入している。関谷校長は「この授業は、少人数のグループ活動を取り入れた『学びの授業』を通して、『問い』『探求』『表現』といった問題解決型の学びの力をつけることを目指そうという試みです」と、この授業に対する期待は大きい。
 草川副校長の授業がまさに「学びの授業」を実践していた。生徒に質問する。グループごとに生徒たちは懸命に考える。それぞれが導き出した答えを披露し、導き出した答えをみんなで振り返った上で、草川副校長が質問しながら正解を解説していくのだ。
 「こういうスタイルでこそ生徒たちは触発され、意欲的に取り組むことができると思います。『教師の責任はいい授業をするのではなく、生徒一人ひとりの学ぶ権利を保障すること』なのです」と草川副校長は熱く語った。
 これは、生徒に背を向ける、いわゆる板書中心の授業ではない。草川副校長がこのような授業方式を取り入れたのは、東京大学大学院教育学研究科教授の佐藤学氏に出会い、教師としての責任を自覚したからだ。それ以来、佐藤氏の指導を受け、長年、「学びの授業」づくりに取り組んでいる。そのために、「教職員が同じ職場で生活しただけの同僚として生きるのではなく、授業改革に向けて努力し合う、同僚性のある仲間として育つことに重点を置くようにしています」と草川副校長。
 生徒たちからは「学びの授業」は好評で七月になると、「日本史の授業が楽しいです。私は中学のころ歴史は暗記するだけで苦手だったけれど、草川先生の授業はただ黒板に書くだけではなく、その出来事の裏にあった事実(背景)を教えてくれるので、とても分かりやすい」「私は日本史が得意ではないですが、今はだいぶ、コの字型授業に慣れてきました。慣れてくると、話が聞きやすいと思いました」――など、前向きな感想を持つように変化してきた。
 授業は後半になり、草川副校長は授業のまとめとして、「なぜ、近代日本は戦争の道を歩んだのか?」を、歴史を大きくとらえさせる必要から、草川副校長作成の図で解説を行った。「人間として自立するために、ここできちんと進路を決めて勉強しなければなりません。授業のレベルは下げない方針です」と生徒たちに呼びかけていた。アッという間に五十分授業は過ぎた。
 試験問題の中には、必ず授業を受けての感想を書かせる問題が含まれている。「歴史を考えさせるには、物事を社会的に広く考えさせたいから」という草川副校長の願いが込められている。
 関谷校長は、「この取り組みによって、生徒が学び合うために、教師が学び合う文化を根づかせていきたいと考えています」と強い決意をみせている。
 同学園は創立八十周年を迎え、新しい第一歩を踏み始めている。

コの字型の机の配置で生徒の意欲を引き出す授業を行っている

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