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記事2008年10月3日 2111号 (3面) 
教育改革推進に向けたFD活動
私情協が教育改革IT戦略大会
何を学んだかヘシフト
教育目的具体的・検証可狽ネ形に
 私立大学情報教育協会(会長=戸高敏之・同志社大学工学部教授)は、平成二十年度教育改革IT戦略大会を九月二日から四日まで東京・市ヶ谷の私学会館で開催し、事例紹介や発表、分科会などを行った。このうち、二日に行われた事例紹介では、三つの事例が紹介された。

 「教育改革推進に向けたFD活動」をテーマに山口大学の小川勤・大学教育センター教授と、大同工業大学の酒井陽一・授業開発センター長がそれぞれ事例発表を行った。
 山口大学では、教育「何を教えるか」から学習「何を学んだか」へとパラダイムシフトを行い、グラジュエーション・ポリシー(GP)を取り入れている。GPとは@学生に保証する最低限の基本的な資質を示したもの、A教育目的をより具体的・検証可能な形に書き換えたものであるとして、卒業生、修了生が備えておくべき資質としている。
 このGPと各授業科目での到達目標との関係性を示した「カリキュラムマップ」(表)が学科別に作成され、各授業の到達目標やGPの具体的項目が挙げられ、その授業がGPの何番をどの程度満たすのかが示されている。
 また、ウェブシラバスには、授業の目標として「一般目標」と「到達目標(知識や思考など五つの観点別)」を記載。学生がその授業を通して身につけることのできる力を行為別に具体的に記している。
 これら、GP、カリキュラムマップ、ウェブシラバスは、三位一体のプランツールとして設計されており、授業はこれらのプランに基づいて行われ、学生授業評価・教員授業自己評価・ピアレビューを実施、さらにそれらに基づいて改善を行うという、PDCAサイクルを行っている、などと小川教授は報告した。
 続いて、酒井授業開発センター長は、次のように報告した。
 大同工業大学は、入学者の低学力化などから、二〇〇一年に授業憲章を作成、その中で、全授業の公開を行い持続的に授業の改善と充実に努めることを掲げ、研究授業と授業研究会を始めた。
 研究授業は通常の授業・時間割で実施、教員が参観し、事務職員も見学する。この研究授業はまた、学内LANでライブ配信およびオンデマンド配信を行っている。さらにデータベース化もされている。
 授業参観後、教員は研究授業レポートを書いてすぐに提出、学生も研究授業アンケートを授業の最後に書いて提出する。その日の夕刻には授業研究会が行われ、学生のアンケートに基づき、授業方法・内容を討議する。
 これらの研究授業をとりまとめた『授業批評』を年四回発行。このほか、授業評価アンケート・学習到達度アンケートの集計分析では、教員レベル、学科・教室レベル、授業開発センター(全学)レベルの三層構造で分析・省察を行っているなどと、酒井センター長は話した。
 最後に、「教育改革支援のためのSD活動」と題して、学校法人立命館の本間政雄・副総長(大学行政研究・研修センター長)が事例発表を行った。
 大学事務は多様化・高度化が進み、また量的にも増加している。このため、事務職員や事務組織に求められる能力・スキルも高度化・多様化している。
 そこで、立命館では、二〇〇五年度から「幹部職員養成プログラム」を開始。内容は、立命館の各部長による各部の課題と政策の講義、文部科学省などによる高等教育に関する講義とレポート作成、さらに、「統計学、統計解析」の講義、日本語検定・TOEIC受検義務、大学行政管理学会での論文発表義務、首都圏大学調査と英米大学調査、「政策立案演習」などとなっており、最終的には論文を作成する。
 四期目となる二〇〇八年度は、受講生十六人、聴講生は二十二人、聴講生は他大学からの参加もある。今年の研究テーマは十三テーマで、例えば「同志社大学との競合分析を通じた『教育力』ブランド戦略の構築〜学生の『成長力bP』を目指して〜」などがある。
 立命館では既に新たな専門職として「研究プロデューサー」を設置。四学部二十五学科に一人ずつ専任スタッフを置き、各学科の教員全部の研究内容をすべて把握し、企業との橋渡しや、競争的資金プロジェクトの企画・交渉、研究成果の企業化・特許化などを担当している。
 また「カリキュラム・コーディネーター」も置き、正課のカリキュラムの内容やレベルの一貫性・整合性、教育方法などを組織的にレビューし改善を図る、などと本間副総長は話した。
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