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記事2008年10月23日 2113号 (1面) 
文科省は増額要求、財務省は削減する姿勢
私学助成は厳しい環境
昨年上回る削減基準
衆院選結果も不透明要素に

吉田会長


平野会長

平成二十一年度政府予算案編成まであと二カ月。国の厳しい財政状況から文部科学省の私学助成予算も減額されかねない情勢だ。厳しい制約の中で同省は来年度の私学助成関係予算については、幼稚園から大学まで含めて総額で前年度比四・四%増の四千六百九十九億五千六百万円を八月末に財務省に要求したが、財政再建を優先する財務省は私学助成の削減を強く求めている。十二月下旬には決着が図られる見通しだが、加えて年内実施も取りざたされている衆議院選挙の結果によっては、私学助成の環境が大きく変わる可能性もある。

 平成二十一年度政府予算案に関しては、今年七月二十九日に各省庁が財務省に予算要求する際の基準が閣議で決められているが、その基準では政府は歳出全般の見直しを引き続き行い、財政健全化の努力を今後も継続していくこと、私立学校振興費については、政府のいわゆる「骨太の方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定)で示された前年度予算額から一%削減した額を基準とするとの方針が継続されることになった。
 来年度予算要求の基準では、一%減に加えて、新たに裁量的経費と言われる私学助成や国立大学法人運営費、科学技術振興費、公共事業関係費等の中から、それぞれ前年度当初予算の二%相当額を差し引したうえで、それらを合計し、「重要課題推進枠」として成長力の強化、質の高い国民生活の構築等に再配分することになった。重要課題推進枠は総額で三千三百億円程度の規模だ。
 文部科学省私学部では、来年度の私学助成については、最終的な制約は前年度比マイナス一%で、新たな二%相当額については、私学関係補助事業の内容を見直したうえで、より良い形で二%相当額を再び私学助成の中に戻す意向だ。しかしこうした文部科学省の意向が政府内の最終的な予算案編成の中で通るのか、財務省が強く抵抗するのか、不透明な情勢で、私学助成が減額される可能性もある。事実、私立大学等経常費補助金については、平成十九年度、二十年度と二年続けて前年度比一%の、規定どおりの減額が行われている。私立高校等に関しては、一%削減は行われずに来たが、財政再建三年目の平成二十一年度予算では減額される可能性はある。
 まさに厳しい状況の中で文部科学省は私立高等学校等経常費助成費等補助金について前年度比二・九%、三十億円増の一千六十八億五千万円の要求している。
 政治情勢、経済情勢とも先行き不透明だが、そうした中でも日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長=富士見丘中学・高校理事長・校長)、日本私立小学校連合会(平野吉三会長=啓明学園理事長)、日本私立小学校中学校高等学校保護者会連合会(新延克己会長)では十二月四日に都内の日比谷公会堂で私学振興全国大会の開き、私学関係予算の拡充を与党議員に訴えることにしている。私立高等学校等経常費助成費等補助は国の補助金で、都道府県が私立学校に助成をした場合、その一部として国が県に対して出す補助。県の補助金が生徒一人当たり年額三十万円の場合、国の補助はそのうちの五万円程。
 一方、施設・設備関係の補助金では、近年、大規模地震が日本各地で頻発し、学校施設の耐震化が急務となっていることから学校施設耐震改修事業の拡充と、低炭素社会の実現に向けた施設整備を支援するエコキャンパス推進事業の創設が特徴。
 「私立高等学校等施設整備費補助」は、前年度の二倍強の四十四億八千九百万円の要求。この事業は私立の高校、中等教育学校、中学校、小学校、特別支援学校を対象としたもので、同補助の大半を占める学校施設耐震改修事業の予算要求額は前年度比二十三億百万円増の三十七億八千万円。これは耐震診断を含め、学校法人の耐震改修工事に対する補助で、補助率は三分の一以内。ただしIs値(耐震指標)が、〇・三未満の施設については補助率を二分の一以内に引き上げる。また同補助ではこれまでの私立学校エコスクール整備推進モデル事業を見直して、新たにエコキャンパス推進事業とする。この事業は太陽光発電や校舎内外の緑化、雨水・排水の再利用など低炭素社会実現に向けた環境に配慮した校舎施設の改造工事への補助で、予算額は前年度比一億一千万円増の二億円。同補助にはこのほか防犯対策やアスベスト対策などを目的とした防災機能強化施設整備費補助、校内LANの整備等を目的とした高機能化整備費補助がある。コンピュータ等IT教育設備の購入費の一部を国が補助する「私立高等学校等IT教育設備整備推進事業」は、前年度と同額の十億円の要求。補助対象や対象事業の条件等に変更はない。老朽校舎の建て替え整備事業について利子助成を行う「私立学校施設高度化推進事業費補助」は、前年度比七・〇%、八千二百万円増の十二億五千九百万円の要求。地震防災対策特別措置法が今年改正されたことを受けて平成二十一、二十二年度の利子助成率の上限を、大学等、高校等それぞれについて今年度より〇・五ポイント引き上げ二・一%、一・六%とする。

新延会長

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