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記事2008年10月13日 2112号 (1面) 
全国私学教育研究集会 北海道大会開催
地域連携の実践報告
ボランティアなど柱に
 今年で五十六回目となる全国私学教育研究集会北海道大会が十月九・十の両日、札幌市の札幌ガーデンパレスを会場に開かれた。今年の研究目標は「時代を見すえ、未来を拓く私学教育」。深刻な少子化や公費支出の公私間格差等により開催地・北海道はもとより全国の私立中学高校は厳しい経営環境に立たされているが、研究集会では北海道の中学高校が地域に根をはり地域に信頼される中で地域貢献や生徒の進路希望実現、人間力の育成等に奮闘する姿が報告された。

 初日に行われた全体集会の開会式では財団法人日本私学教育研究所の吉田晋理事長が主催者として挨拶、中高一貫教育や先取り教育など私学の先進的な取り組みが今の我が国の中等教育を支える基になったこと、そうしたことを国はしっかりと受け止めているのか、改めて訴えていきたい、と語るとともに、社会性を身につけさせる、人となりの教育ができるのは私学、教員一人ひとりが頑張って資質向上を図っていこうと参加した教員らに呼びかけた。
 二日目は私学経営や進路指導など六つの部会で研究協議が行われたが、このうち「教育改革と私学経営の課題」を研究目標に掲げた私学経営部会では、外山茂樹・函館大妻高校長(函館市)が「公私協議と函館の私学」と題し、また七五三木正巳・武修館高校長(釧路市)が、「地域に愛され信頼される私学をめざして」と題して実践報告した。またこれに先立って、日本私立学校振興・共済事業団の西井泰彦・私学経営情報センター長が「私立高校の環境と経営革新の課題」と題し、中央教育審議会委員や教育再生懇談会委員など政府の審議会委員を数多く務める田村哲夫・渋谷教育学園理事長が「教育改革の方向性」のテーマで講演した。
 このうち外山校長は公立学校志向の強い北海道の中で、函館の私学はクラブ活動、特色ある教育内容、進学実績、地域連携などで高いパフォーマンスを実現し社会的評価も高く、公私対等の関係を維持、また私立学校が強く団結していると同時に、互いに切磋琢磨していること、地域の町づくりを考えた人づくりなどを行っていることもあって、市からも財政支援を得ていることなどを報告した。
 また七五三木校長は、入りたい生徒はすべて入学を認めるなど最底辺の子供を集める学校だったことから、教員の目が届かず、多い年で年間七十人もの中途退学者を生んでいたこと、そうした中でボランティア活動をキーワードに学校改革に着手、可能なところから学校の評価を高めていく、当たり前のことを当たり前にできる人間の育成を目指したこと、生徒の公立学校受験失敗の心の痛手をケア、予防的開発的生徒指導を心がけたことなどから、今年は退学者ゼロを目下実現しているなど、生徒が学校生活を楽しみにする学校になりつつあることなど改革の苦労と成果を報告した。
 西井センター長は、生徒の減少に見合った学校のスリム化が大切で大規模校ほど危険性が高いこと、教員の能力向上が公立学校との競争力となること、公立学校の統廃合が進んでいるが、公立学校の減少は、残った公立校の競争力上昇を意味することなどについて説明した。田村理事長は、教育の国際化が進む中で、私立学校は変革を続けていかなくてはいけないこと、上位層だけでなく、社会を下支えする人の教育が大切で、教育(の成否)は教師がどう考え行動するかに尽きること、それだけに校長の影響は大きいことを強調した。
 また初日の記念講演では閉鎖寸前の動物園を日本一の動物園に育て上げた旭川市旭山動物園の小菅正夫園長が動物園改革への情熱や経緯などを説明した。調査を行ったところ市民は動物が生き生きしていない動物園は面白くない、小学生の行く場所などと考えていること分かり、愕然とした小菅園長は、動物の種が生きるために進化の過程で獲得した形態を分かりやすくみせたこと、自分たちが動物を飼育する中で知りえたことで本にも書いてないようなことを来場者に伝えたこと、園の挑戦は飼育担当者十人で話し合った理想の動物園が下地となっていることなどを紹介した。
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