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記事2007年6月3日 2066号 (2面) 
特待生問題私学検討部会開く
財団法人日本高等学校野球連盟
野球特待制度存続で基準検討
6月26日には結論 憲章の新解釈で対応
財団法人日本高等学校野球連盟は、五月二十四日、大阪市の同連盟内で第一回特待生問題私学検討部会を開催した。同連盟が問題視する私立高校の野球特待生制度に関して学校教育活動の一環としての部活動の趣旨を損なわない制度のあり方について私学関係者の意見を集約してほしいと全国九地区の私立高校代表を集め開かれたもの。

 第一回特待生問題私学検討部会は、高野連事務局(中沢佐伯記念野球会館内)の二階会議室で午後一時半から、九人の私立高校長(後掲)が横一列に並び緊張した面持ちで始められた。私学関係者の正面には脇村春夫会長や田名部和裕参事(審議委員)ら七人の役員が向かい合い、両側には九地区の高野連理事十人が陪席、その周りを約六十人のマスコミが取り囲むという状況だった。会議は非公開で行われた。
 野球特待生制度に関して高野連は、四月二十日の段階で日本学生野球憲章第十三条等に抵触する「選手または部員であることを理由としたスポーツ特待制度の即刻中止、撤回を求める」など厳しい姿勢で臨んでいたが、実態調査の結果、四百校近い私立高校から特待生制度を設けているとの申告があり、マスコミも大きな関心を寄せ、高野連の対応を批判する論調も少なくなかったことから、高野連側が学生野球憲章第十三条は存続させつつも、解釈の変更で現実的な対応をしようと方針転換を行ったものといえる。私立高校側も高野連やマスコミの論調などに緊張しつつも、高野連に対する不満が噴出、とりわけ高野連側が「生徒本人にも責任がある」と発言したことには強い批判が集まった。
 また日本私立中学高等学校連合会(田村哲夫会長)も四月二十七日に特待生制度廃止方針の再考等を求める意見書を高野連に提出、五月十日には日本私立小学校中学校高等学校保護者会連合会の稲田昌広会長が高野連を訪ね、在籍中の生徒部員の将来に問題や影響を及ぼさないような処置等を求めた要望書を田名部参事に手渡している。
 そうした中で開かれた第一回の私学検討部会では、野球特待生制度の存続を認めつつ、行き過ぎた行為については規制していく方策や今後の検討スケジュールが高野連側から打診され、話し合われた。同日以降、全国各都道府県で私学部会を開催、各地区会議を経て、六月二十六日には第二回の私学検討部会、臨時全国理事会を開催し、私学側の提案を元に平成二十年度に向けた生徒募集要項作成の時期を考慮し基準を決定する、との日程が決定された。
 二十年度以降の基準については、中・長期課題の検討やその後の経過を確認するため私学検討部会での協議を継続、十一月下旬に基本方針を全国理事会で決定する方針だ。
 野球特待生制度存続のための基準に関しては、(1)中学生募集段階の問題点、(2)部活動参加者を対象とした容認できる制度の検討、(3)寮費減免の是非が検討課題として挙げられたが、具体的には生徒募集に当たってどういう歯止めをかけていくか、入学の判定前に授業料等の減免を決定した場合にどのような問題があるか、生徒募集要項にはどのように記載をすれば分かりやすいか、記載の仕方などが今後検討されていく見通しだ。また私立高校長からは特待生制度は私立学校の生命線だとする意見や同じ学生野球憲章の下でそれぞれ大学生、高校生が野球をやっていることから同じ扱いにすること、高野連は特別といわず、財団法人全国高等学校体育連盟と足並みを揃えた方向の検討や、一カ月弱の期間しかない中で全国の私立高校の意見を集約することの難しさを指摘する意見などが出された。

寮費の減免等が課題

 第一回の特待生問題私学検討部会の終了後には、定例の全国理事会が行われた。平成十八年年度の事業報告案や決算案などの審議が中心課題だったが、特待生問題私学検討部会の報告なども行われた。会議終了後には脇村会長と田名部参事の二人が記者会見に臨み、脇村会長は「私学の経営のことも頭にあるが、具体的基準作りに向かって三項目を含め検討していただく」としながらも、私学関係者から憲章を見直すべきだとの意見は検討部会で出なかったこと、仮に各地区の私学関係者から憲章の見直しが提案されても見直す考えのないことを強調した。
 またこの会見の中では野球留学≠ノついては、金銭が関与する特待生制度と結びついていない限り問題にはしないこと、高校野球として行き過ぎた行為を列挙して書き上げてほしいとも語り、さらに脇村会長と伊吹文部科学大臣との懇談では、大臣から寮費を丸抱えしている点は問題との発言があったことから、寮費について他の競技も含めて公平な制度や一部免除なら問題はないが、格差ある免除については問題との認識を示した。また田名部参事は五月二十三日に高体連の梅村和伸専務理事と電話で情報交換し、高体連も特待生制度を全面的に認めているわけではなく、現在はルールがないため、一定の歯止め措置を来年三月までに検討する予定にあることを明らかにした。
 高野連の特待生問題私学検討部会の私学九地区代表は次の各氏。中島憲二・北海学園札幌高校長(北海道)、木村隆文・青森山田高校長(東北)、大澤一仁・平塚学園高校長(関東)、藤原有仁・北陸高校長(北信越)、赤附k二・美濃加茂高校長(東海)、北村聡・京都外大西高校長(近畿)、宅野幸徳・江の川高校長(中国)、片岡至・新田高校長(四国)、吉田宗利・佐賀学園高校長(九州)。

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