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記事2007年6月13日 2067号 (1面) 
財政制度等審議会が予算編成で建議
私学助成経営状況の反映を
教育予算増額要求を牽制
幼児教育無償化の具体的な検討必要
財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会(西室泰三会長) は、六月六日に財政制度分科会と財政構造改革部会の合同会議の議を経て、「平成二十年度予算編成の基本的考え方について」と題する建議を取りまとめ、同日、尾身幸次財務大臣に提出した。

 この中で、文教分野における歳出改革への取り組みとして、「はじめに増額ありき」で教育予算や教職員数を増やしても教育が良くなるわけでなく、教育の質の向上に資する予算を見極め、メリハリ付けを徹底し、助成・配分方式を見直すことが重要である、と強調している。
 私学助成については、今年度から各校の経営戦略の特色に応じた支援を行う仕組みへの転換(特別補助の改組)が図られ、また定員割れの解消等経営改善に取り組む私学を支援するインセンティブが導入されたが、今後はより効果的に私学の経営健全化を促すべく、私学助成の過半を占める一般補助の配分に当たり、単に定員割れか否かだけでなく、より一般的な私学の経営・財務状況を表す指標を用いるなど、私学の経営状況が助成額により直接に反映されるような改革を進める必要がある、としている。
 また、幼児教育無償化については、教育政策論として考えるのなら、義務教育無償の原則のもと、教育政策担当部局において、まずは幼児教育の義務化について結論を得る必要があり、そうした結論に至らない場合は、少子化対策として、幼児教育の負担軽減がどれだけ有効かという観点からの検討をデータに基づいて行うべきであり、また、少子化対策として、幼児教育の負担軽減がどのケースにおいて特に求められているのか具体的な検討を行う必要がある、としている。
 建議では、教育予算の増額要求に対して、教育の重要性は認めながらも、効率化の取り組みや無駄を省く努力なしに予算増額のみが追求されれば、結局は子どもたちにとって、背負わされる借金が増えるだけである、と切り捨てており、効率化を徹底し、教育の質の向上に直接資する予算とは何かを見極め、そこに予算をシフトしていくことが必要である、と強調している。
 さらに、教育予算の対GDP比を諸外国と比較する議論については、わが国の租税負担率は諸外国と比べて相対的に低いこと、政府の総支出に占める教育予算の割合は欧州諸国なみであること、などを指摘するほか、時系列データでは、平成元年以降、小中学校の生徒一人当たりの公教育支出は一・五倍以上、教職員数は一・三倍以上となっているにもかかわらず、教育問題が深刻化していることを例に挙げ、予算増額だけでは教育が良くなるものではないと牽制している。
 なお、尾身財務相は、六月四日に開催された経済財政諮問会議において、教育予算について、教育の質の向上に資する真に必要な予算は何かを見極めていく必要があり、効率化を徹底しながら、メリハリを付けて教育再生に真に必要な予算については財源を確保していくと発言し、六月六日の建議とほぼ同趣旨の姿勢を示した。また、教育再生会議がこれまでまとめた報告については、国立大学中心のような感があり、私立大学をどう位置づけるかはっきりした哲学がない、と評した。
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