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記事2007年5月23日 2065号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
大学設置基準見直しと基本計画検討
FDの義務化図る改正 キャンパスごとに教員、施設整備など
【大学分科会制度・教育部会】
中央教育審議会の大学分科会制度・教育部会(部会長=郷通子・お茶の水女子大学長)の二回目の会合が五月十一日、都内で開かれ、大学設置基準の見直し案と教育振興基本計画に盛り込むべき内容を検討した。
 このうち大学設置基準の見直しに関しては、事務局(文部科学省)が、平成二十年度から実施を予定している事項と中期的課題を提示、それについての議論が行われた。事務局案は、昨年十二月、前期の大学分科会制度部会で概ね合意を得た事項を中心にその後の状況変化等を反映した改革案。
 平成二十年度からの実施を予定しているのは、(1)大学院設置基準改正(平成十八年度)を踏まえた改正、(2)基準の明確化を図る改正等。このうち(1)に関しては、先行実施している大学院に合わせて、大学に教育研究上の目的を学則等に定め公表することやシラバスの明示を課し、FDの義務化(大学という組織体に義務付けるもので、教育個人に対してではない)を行うほか、大学が、一つの授業科目について講義と実習など二つ以上の方法の併用により行う場合、その組み合わせに応じ、授業方法ごとの基準を考慮して当該大学が定める時間の授業をもって一単位とすること。
 また(2)では、科目等履修生等について収容定員を超えて受け入れる場合、相当数の専任教員の増加等を行うこと、大学が二箇所以上のキャンパスで教育研究を行う場合、それぞれのキャンパスごとに必要な専任教員や施設設備を整えること(現在は合算)。ただしキャンパスが近接している場合は対象外とすること、大学がその目的を達成するために必要な授業科目の開設は、自ら行うものであることを明確化すること(外部での実習を否定するものではないが、大学側の主体的体制が必要)、さらに大学は専用施設を有することとするが、一定の条件を満たす場合には他の学校、専修・各種学校との間で施設を共有することができること、大学が多様なメディアを高度に利用して行う授業の要件について、毎回の授業の実施に当たって設問解答、添削指導、質疑応答等による指導を併せ行う形態を取る場合には、多様なメディアを高度に利用しまたは指導補助者を配置する等により、十分な指導を行うものすることとしている。
 中期的課題については、学位授与機関たる大学にふさわしい教員組織のあり方、専任教員、実務家教員等の要件および審査等のあり方、校地・校舎、施設・設備(運動場・空地等)に係る要件のあり方、情報の積極的公表に関する規定のあり方、通信制に関する規定のあり方、大学院大学に関する規定のあり方を挙げている。
 こうした設置基準の改正に関する提案に基本的に異論はなく、承認されたが、委員からは、中期的課題と整理されている専任教員の要件のあり方に関しては、先に株式会社立のLEC大学の専任教員等を巡って文部科学大臣から改善勧告が出されたことや、急増している大学院大学の規定の整備を急ぐべきだとの意見が出されるなど、中期的課題と整理された事項の中にも緊急に対応すべき事項も少なくないことから、適切な対応を求める意見が複数の委員から出された。
 大学・短期大学の設置基準の改正案はパブリックコメントにかけられた後、六月に開かれる大学分科会に諮問され、同日、答申、平成二十年四月一日から実施される予定。
 一方、教育振興基本計画に関しては、事務局が同計画に盛り込むべき政策の柱(高等教育関係)を提示、それについて検討が行われた。そのうち大学等における厳格な成績管理(出口管理)に関しては、「言うは易いが、実施は難しい。文部科学省としてどのような支援を考えているのか」といった意見や、そのほか「高等教育の質の向上には公的資金の更なる投入が必要」、「どの程度の大学進学率を目標とするのか」、「大学の機能分化により質の向上を図るべきだ」、「機能分化しても高等教育の問題は解決しない」などこれからの高等教育政策に関わる議論が展開された。
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