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記事2007年5月23日 2065号 (4面) 
産学連携 (6) ―― 日本工業大学
埼玉りそな銀行と覚書を締結
研究成果を地域社会に還元

日本工業大学(柳澤章学長、埼玉県宮代町)は平成十八年十一月十五日、埼玉りそな銀行と「産学連携協力に関する覚書」を締結した。この締結により、地域経済・社会の発展、活性化に寄与するため、さらに連携を密にして大学が持つ先端技術、応用技術といった分野での幅広い研究成果やノウハウなどを、同行のネットワークを通じて地域社会に積極的に還元していく方針だ。




起業家精紳の醸成
中小・中堅企業への支援


 同大学は明治四十年開校の東京工科学校を前身とし、今年で創立百周年を迎える。昭和四十二年、工学科の五学科を持つ日本工業大学として設立され、実践的技術者の育成を基本方針とし、産業界、とりわけ中堅・中小企業の期待に応えてきた。そして、平成十八年四月、産官学の交流活動を積極的に行うとともに、起業のための人材育成等の教育活動を展開し、社会的要請に応えることを目的に、従来の産学リエゾンセンターを発展させ、「産学連携起業センター」を開設した。このセンターの目指す起業教育は、単にベンチャー創業者を生み出すのではなく、既存の概念を突破していく「起業家精神」の醸成と、問題発見・解決能力といった「起業的資質」を養う教育にある。
 同大学大学院技術経営研究科教授・産学連携起業教育センター長の上原健一教授、同センターの松倉宏一氏は、「大学の研究成果を利用して利益を得るというよりも、むしろ大学の知恵を中小・中堅企業が抱えている問題の解決に役立つようにという点に力を入れている」と中小・中堅企業への支援を強調する。
 埼玉りそな銀行との協力は、セミナー開講、共同研究、受託研究、インターンシップなどの事項に及ぶ。同大学にとって、埼玉りそな銀行を通じて、多くの企業と知り合うチャンスが生まれてくるメリットもある。
 昨年六月二十一日には、「産学交流セミナーin日本工業大学」(主催=埼玉りそな銀行ほか、協力=日本工業大学)が開催された。このセミナーは、まさに多くの企業との交流を深める絶好の機会だった。同銀行と取引のある製造業を中心に約七十五社、百人を超える経営者らが参加し、同銀行の産学連携についての取り組みや同大学の研究分野の紹介が行われた。工業技術博物館、機械工作センター、CAD/CAM実習室など学内施設見学も実施された。
 セミナー開催後には、参加企業のうち四十社以上の企業から技術相談、研究委託などの問い合わせが寄せられた。現在、個別の企業のニーズに対応している。

実学教育、特に起業教育
ビジネスプランコンテスト


 同大学が目指す実学教育=A特に起業教育が最も表れているのは、「産学連携起業教育センター」が主催する学生起業家育成支援プログラム「ビジネスプランコンテスト」だ。今年で二回目となるこのコンテスト(受賞者は八月中旬発表)は、ビジネスを立ち上げる上での優れたプランの作成を競うもので、同大学に在籍する学部生・院生を対象とする。昨年は応募が七十グループほどあった。今年は、優秀賞(十人程度)には「国内企業・ものつくりとベンチャー視察研修の旅」に招待することになっている。そのほか、奨励賞(十人程度)として研修費が支給される。このコンテストには、将来起業したいと考えている学生らに対し、技術面だけではなく、ものつくりの現場を分かってほしいという願いが込められている。
 そのほか、同大学が推進している産学連携として、ベカルト社(本社=ベルギー)と同大学の共同出資によりベキニット株式会社(東京都中央区)を設立したことが挙げられる。柳澤章学長・博士が開発した画期的な金属繊維製造技術とベカルト社が培ってきた金属繊維製品に関する技術とが手を結び、各種の金属繊維製品を提供している。
 同大学の卒業生の多くは、ものつくりの現場で働いている。建学以来の実学志向の理念が脈々と受け継がれている証だ。今後も企業とのネットワークを広げていく方針だ。
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