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記事2007年4月23日 2063号 (2面) 
「留学生に対する危機管理」で調査報告 日本私立大学連盟
管理体制に課題も
外国人留学生2.5万人受け入れ
海外派遣11万人 大幅な増加
 留学や語学研修で海外に行く学生が増加する中、最近では国際テロや感染症、ハラスメントなどのリスクも高くなっているといわれている。四月十六日(現地時間)にはアメリカ・バージニア工科大学で銃乱射事件が発生し、史上最悪の三十二人が死亡したと報道された。海外に行く学生に対して、大学ではどのような危機管理をしているのかについて、日本私立大学連盟の国際教育・交流委員会(委員長=林堅太郎・立命館アジア太平洋大学副学長)の調査「国際教育・交流調査二〇〇六」(昨年九月実施)から、受け入れ留学生の状況、派遣留学生の状況および危機管理に対する報告の概要を紹介する。

 (1)外国人留学生受け入れ状況
 加盟大学における平成十八年五月一日現在の外国人留学生受け入れ総数は二万五千三百十二人で、平成十七年に比べて二百七十四人減少し、「外国人留学生受け入れ十万人計画」達成以来、初めて減少した。
 国籍別割合は、中国が最も多く六二・九%、次が韓国で一六・〇%、三位が台湾で四・〇%、以下アメリカ二・二%、タイ一・七%の順となっている。
 (2)学生の海外派遣状況
 平成十七年度の学生の海外派遣総数は十一万千五百五十五人で、平成十六年度に比べて二千二百二十四人増と大幅な増加となった。短期(一学期未満)と長期では、短期の七千人以上に対して長期は約四千人と、圧倒的に短期留学が多い。
 行き先国別割合を見ると、アメリカが最も多く二七・六%、二位はイギリスで一三・三%、以下、中国九・三%、カナダ九・二%、オーストラリア七・五%の順となっている。
 (3)危機管理体制
 まず派遣先リスク情報の入手ソースとしては、「外務省」(八三・七%)が最も多く、以下、「旅行会社」(五五・三%)、「厚生労働省」(四三・九%)、「危機管理NPO団体」(二八・五%)、「保険会社・アシスタント会社」(二一・一%)、「駐日外国公館」(二一・一%)、「危機管理会社」(一〇・六%)、「JICA国際協力機構」(七・三%)で、「特になし」も五・七%ある。
 学外機関との危機管理への取り組みを回答率の高い順に挙げると、「大学間での協力体制」「旅行会社主催の企画旅行として運営」「専門NPO団体と契約」「法律事務所・顧問弁護士からアドバイス」「派遣先大学との法的責任の明確化」「リスク対応会社と契約」などとなっているものの、「特になし」も一七・一%ある。
 学内での危機管理体制の現状については、「十分整備」はわずか四・九%だった。
 「ある程度整備」が七五・六%、「未整備」が一六・三%もあり、大半の大学で課題を抱えていることになる。
 「ある程度整備」および「未整備」と回答した大学にその課題をたずねたところ、「緊急対応マニュアルの作成・見直し」(五九・三%)が最も多く、次は「教職員の危機意識・関連知識・対応能力の向上」(五七・五%)、以下、「危機発生を想定したシミュレーションの実施」「事故対策規定・組織の確立」「緊急時の情報収集体制の確立」「緊急連絡体制の整備」「指揮命令系統の明確化」「家族への対応体制整備」「マスコミ対応・官庁対応など対外広報」が挙げられている。

海外旅行傷害保険加入80%以上
最も多い協定校留学制度


 実施している海外派遣プログラムは、「協定校留学制度」が最も多いが、「短期語学研修」や「学部・学科独自の派遣プログラム」、「フィールドワーク・インターンシップ等」など形態が多様化していることから、危機管理に対する大学側の十分な対応が必要になってきているといえよう。
 留学中の安全確認体制については、各プログラムとも「学生と緊急連絡体制を確立」「安全に対する情報を提供」が多い。「認定留学制度」を除いては「現地受け入れ担当者との緊密連絡」も行われている。「指定校留学制度」では「在外公館に在留届の提出」と「定期的な近況報告の義務づけ」が他のプログラムに比べて高率となっている。また、「学部・学科プログラム」「フィールドワーク・インターンシップ等」では過半の大学が「引率者の同行」を実施、「短期語学研修」は七割の大学が「引率者の同行」を実施している。派遣留学生対象の海外旅行傷害保険については、「学生の個人契約で全員加入」と「大学の法人契約で全員加入」を合わせると、「認定留学制度」を除くすべてのプログラムで八〇%以上となっており、保険加入が一般的になっている。加入している保険の種類は、「事故対策保険」が最も多く、次が「弔慰見舞い補償」、三位は「賠償責任保険」だった。

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