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記事2007年3月3日 2058号 (1面) 
教委による指導等に反対 中高連等が中教審に意見表明
私学が新教育創出意欲喪失
多様な教育損なう
教育の再生を目指して「地教行法」等の改正を審議中の中央教育審議会は、二月二十八日、日本私立中学高等学校連合会など私学団体を含む教育関係三十団体から改正の方向性等について意見聴取した。この中で日私中高連は、近藤彰郎常任理事が、私立学校は学習指導要領について重要な基準としての認識を持っており、好き勝手なことをしているわけではないこと、私学関係者は法令順守の精神を強く持っているとした上で、教育委員会による指導・助言・援助については、私立学校の新しい教育への意欲を喪失させ、国民が求める多種多様な教育の選択を損なうとして断固反対との意向を示した。同時に高校は進学率が九七%で極めて多様な生徒が入学しており、単一の学習指導要領を適用することには無理がある点を指摘、思い切った見直しを求めた。

 中教審では、同日、意見聴取後と、三月三日に意見が大きく対立している地教行法改正問題等を話し合ったが、教育委員会による私学への指導・助言・援助の是非について賛否両論があり、結論には至らなかった。その結果、教育委員会による私学関与強化の可能性はなお強く残っている。
 文部科学省は三月十三日の法案閣議決定までに中教審総会等を開くことにしており、あと一回の会合で答申案を提示、協議、修文、大臣への答申まで持ち込む意向。答申案は、これまでの意見等を参考に作成するが、作成については、山崎正和会長、梶田叡一分科会長、田村哲夫、木村孟両副分科会長に一任された。
 三月三日の合同会議では教育委員会の私学関与について、田村副分科会長が最後に、「私立学校が求め、首長部局が承認した場合、教育委員会は公立学校に対するとは違う言葉、表現で支援、せいぜい助言ができる、としてはどうか。私学の独自性・自主性を守ることは日本の教育全体にとって良いこと」との修正を提案した。
 この問題では指導強化を求める委員もあり、意見が一本化できない場合は、両論併記となりそうだ。法改正について国民からの意見募集では、わずか七日間に一千二百五件の意見が寄せられており、私学関係者の意見も多数見られる。
 三月三日の合同会議では、文部科学大臣による教育委員会への是正勧告、是正指示や、都道府県教育委員会教育長の任命に対する国の一定の関与とともに、私立学校問題が大きな焦点となった。
 この中で石井正弘岡山県知事は、私立学校は公立学校より良い教育を展開し日本の教育をリードしており、公立も私学の恩恵を受けていること、私立学校と教育委員会・公立学校は競合関係にあることから教育委員会による指導・助言・援助はあってはならないことなどを強調。また佐々木かをり臨時委員(株式会社イー・ウーマン代表取締役社長)も、「私立学校には関与すべきではない。私学は独自にやっていくべき」と語った。安西祐一郎委員(慶應義塾長)も改めて法改正が必要ないことを指摘した。
 そうした一方で市川伸一臨時委員(東京大学大学院教育学研究科教授)は、「私立学校は確かに中高一貫教育など新しい教育を開発したが、その一方で受験教育への過剰適用というマイナス面もある」とし、学習指導要領が本当に守られているか指導が必要だと指摘した。中教審では意見を発表して教育委員会による私立学校への指導を求める委員は少ない。にもかかわらず、私学を巡る文言がなかなか修正されない状況だ。
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