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記事2007年3月23日 2060号 (1面) 
第4期中教審・初中教育分科会教育課程部会
高校必履修課題に
指導要領論議を開始
大学入試との関係も検討へ
第四期中央教育審議会が先月発足して以降、初めての初等中等教育分科会教育課程部会が三月十六日、都内で開かれ、学習指導要領の見直しに関する審議が約二カ月ぶりに再開した。見直しに当たっては、第三期中教審の検討結果をベースに議論が進められることになるが、改正教育基本法に対応した教育内容のあり方、国語力の育成、理数教育の充実、小学校段階での英語教育、小・中学校の授業時数、高校の必履修科目のあり方、到達目標の明確化、学習評価のあり方など検討課題は多い。

到達目標、学習評価など検討

 このうち高校の必履修科目のあり方の検討は、「未履修問題」と絡んで大きな焦点となっているが、第三期中教審では、生徒の実態が多様化している中で、国民的な教育機関としての共通性は何かとの議論が行われた。生徒の社会的自立を促すとの観点から、実生活との関連を持って学ぶことや、コミュニケーション能力や論理性、想像力の育成、キャリア教育(勤労観・職業観を育成する教育)などが論議された。こうした観点から、生徒の実態の多様化に応じて教育課程を柔軟に編成できるよう、「選択必履修」の考え方が適当とする意見が多かった一方で、高校教育として共通の内容を充実すべきだとの意見も出された。
 また高校の必履修科目のありかたは、大学入試と密接に関わる問題のため、中教審の大学分科会と連携して大学入試との関係も検討する方針だ。
 更に学習指導要領に関して、義務教育学校(小・中学校)と高校とで取り扱いに違いを持たせることも課題となっている。
 第四期教育課程部会の部会長には、梶田叡一・兵庫教育大学長が就任したが、梶田部会長は、十六日の初会合の席で次期学習指導要領について、「義務教育と高校の扱いが同じでいいのか、議論を深める必要がある」と語っており、教育課程部会の下に置かれる教科別等専門部会でも、社会科と理科の検討に当たって、第四期からは小学校・中学校と高校は別々の専門部会との構成とした。
 高校の必履修科目の問題は、教科・科目の範囲といった幅の広さを検討すると同時に、履修や単位修得の水準確保についても検討の必要性が指摘されている。
 教育基本法の改正に対応する教育内容に関しては、いじめを許さないといった規範意識の確立の根底となる道徳教育の内容・形式の見直し、我が国の伝統、文化を受け止め、継承・発展させる教育の充実、宗教に関する教育の充実、情報教育の推進などの必要性が、第三期で指摘されていた。
 小・中学校の授業時数のあり方に関しては、国語力、理数教育、英語教育などの充実の観点から、これまでの議論は、必要な授業時数を確保する方向性だが、具体的にどのように見直すかが課題で、一週間当たりの授業時数の見直し、朝の十分間などを活用して行われている読書活動やドリル学習といった時間の授業時数への組み込み、長期休業日の活用等が検討される見通し。
 その一方で時代の変化等により共通に指導する意義が乏しくなった内容に関しては、見直しの必要性も指摘されており、そうした分野では、企業やNPOなど学校外組織との役割分担、連携も検討されることになる。
 到達目標の明確化、学習評価のあり方に関しては、知識、能力、態度など検討の中で示された各項目に例示すべき内容や、評価の観点、基準のあり方について検討を深める必要があるとしている。
 このほか教育課程編成実施に関しては、各学校が子供の実態や学校段階の特性などに応じて工夫を生かすための具体的仕組みも検討する。
 教育課程部会では、高校の必履修科目のあり方など個別の専門部会で扱えない問題を中教審事務局(文部科学省)と相談して選び出し、数人の委員で検討し「たたき台」を教育課程部会に提案するなどして検討を急ぐ方針だ。どういう課題をどういう順序で検討するかは、梶田部会長に一任された。
 十六日の会合では、文部科学省の銭谷初等中等教育局長が、「学習指導要領の改訂は十年周期で行っており(前回の告示は平成十年)、あまり時間的に余裕がない。教育基本法の改正を受けて学習指導要領の改訂に道筋をつけてほしい。精力的な審議を」と要請した。
 この日の審議では委員から、学習指導要領の見直しの実現を支える教育条件の整備(教員の配置等)の重要性を指摘する意見や、児童生徒の学習習慣の形成に向け、学校が家庭と協力していく必要性、教科書の位置づけ、小学校の英語教育にあまり高いものを求めるべきではない、教員を雑務から解放して指導に専念できるよう人的、財政的条件整備を求める意見などが出された。

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