こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2007年3月13日号二ュース >> VIEW

記事2007年3月13日 2059号 (1面) 
教委による私学への指導見送り
中教審が地教行法改正等で答申
助言・援助法制化へ
3月中に教育改革関連法案一括提出
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」等の改正を審議していた中央教育審議会(山崎正和会長)は三月十日、都内で教育制度分科会・初等中等教育分科会合同会議と総会を開き、答申『教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について』をまとめ、伊吹文明文部科学大臣に提出した。

 焦点となった教育委員会の私学への関与強化について、答申は、私立学校に対して教育委員会の指導を可能にすることは適当ではないと結論付けた。ただし都道府県知事が私学との協議を経て、学校教育に関する専門的な事項について教育委員会に助言・援助を求めることができるとの意見があったことを併記した。教委の助言・援助規定は地教行法改正案に盛り込まれる見通し。伊吹大臣は、近く安倍総理、菅総務大臣と協議し、地方団体の反対が強い国の地方公共団体への是正指示の是非を含めて改正法案の内容について最終判断し、今月中には教育改革関連法案を一括して国会に提出する考え。中教審が教委の私学への指導規定を見送ったことについて、総会後、記者から質問を受けた伊吹文科相は、「知事が、私学が国会で決めた法律通りにやって頂けないという場合、自分の手に負えないという場合であれば、教育委員会に援助等を求めることを可能にするもので、必ずしも求めなくてはいけないというものではない。しかし同時に知事に必ずやってもらわなければならないことは、私学といえども、特に義務教育の場合は、国会で決めた法律だけは守ってもらわなくてはならない。ということで、教育委員会を煩わさなくても自分たちの手で担保できる、というのなら私はそれでいいと思う」と語った。
 総会に先立つ分科会合同会議では、石井岡山県知事が、(教育委員会の私立学校への関与は)助言、指導であっても、規制改革等の観点から問題があるとして反対の意向を表明(総会でも反対を表明)。一方で、市川東京大学大学院教授は、私立学校での未履修問題の原因は建学の精神による教育のやりすぎではなく、受験科目をやりすぎたから。首長の求めに応じ教育委員会が最小限の指導を私学に行えるようにすべきだとして、文言の修正を求めた。このほか答申では、私学に関する地方教育行政のあり方について今後検討していくことが必要と指摘したが、梶田分科会長は、「教育制度分科会等で私学の問題を出し合って検討することが必要」との考えを示した。地教行法以外の学校教育法改正では、学校種の目的・目標の見直し、学校評価・情報提供充実規定や大学等の履修証明制度の新設等を、教育職員免許法・教育公務員特例法改正では教員免許更新制導入、指導が不適切な教員の人事管理厳格化等を行う。
 答申のうち、「私立学校に関する地方教育行政」の全文は次の通り。
 ○私立学校も、公教育の一翼を担うものであり、主権者たる国民の代表からなる国会が定めた法律を遵守することは当然であり、また、特に普通教育の法廷された最低限の基準を担保するため、以下を踏まえ、適切な措置を講ずること。
 ・都道府県知事の下に、主導主事のような学校教育に関する専門的見識を有する者を配置するなど、その体制を充実していくことが必要であるとの意見が出された。また、必要に応じ、都道府県知事が、学校教育に関する専門的事項について、教育委員会に対し、指導、助言を求めうるようにすべきとの意見が出された。なお、都道府県知事が助言、援助を求める場合には、私立学校との協議を経て行うようにすべきとの意見も出された。
 ○都道府県知事の求めに応じて、教育委員会が助言、援助を超えて指導を行うことについては、私立学校の建学の精神や独自性・自主性を尊重する観点から、反対する意見が多く、当審議会としては、教育委員会が指導を行うことを可能とすることは採らないことが適当であると考える。
 ○私立学校に関する地方教育行政のあり方については、今回の答申に基づく措置の状況などを踏まえつつ、今後更に検討を行っていくことが必要である。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞