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記事2007年3月13日 2059号 (3面) 
二〇〇七年首都圏私立中学入試 日能研調査
応募者3万人増 私学受験者は増加
人口都心回帰、入試細分化影響大きい
学力に合わせ手堅く受験
今春の首都圏中学入試は、小学校卒業者数が六年ぶりに三十万人を超えたこともあって、中学校受験者数は約五万八千人(前年より五千人増)、応募者総数は三十一万八千五百四十七人と昨年より約三万一千人も増加、小学校卒業生の中学受験率も一八・九%と、受験者総数、受験率ともに記録を更新した(いずれも日能研調べ、都立・区立一貫校および埼玉・千葉の公立一貫校の受験者も含む)。公立一貫校の影響で私立中学受験者数が減少するのではないかと心配されたが、今年も相乗効果と受験者数の増加で大半の私立中学で受験生が増えた。ただ、すべての私立中学で受験生が増えたわけではなく、低迷したところも一部あって、明暗を分けたようだ。

 今年の首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)私立中学入試の特徴は、私学全体で見て受験者が増加したこと、午後入試が定着したこと、大学付属の人気が高かったこと、共学化したところが増えたことが挙げられるだろう。首都圏の小学校卒業者総数が三十万七千十一人と昨年に比べて約一万三千人も増加したのは、少子化が止まったというより人口の都心回帰によるもののようで、特に、今後、子供たちが急増しそうなのが港区、江東区、中央区の再開発地域である。首都圏全体の子供たちが私学志向を強めていること、さらに公立中高一貫校の千葉市立稲毛高等学校附属中とさいたま市立浦和中が新設されたことも、今年の中学受験率を押し上げた。
 表1の通り、日能研の推定値によれば、東京の受験率は昨年より〇・六ポイント下がって二七・四%だったが、千葉では二・四ポイントアップの一三・九%、埼玉は二・一ポイントアップの一六・九%と、千葉・埼玉の受験率が大幅に高まったことが、全体の受験率を押し上げ、過去最高を記録した。公立を含むとはいえ、首都圏では二人に一人、東京に限れば五人に一人が中学受験をしていることになり、中学受験は普通のことになりつつある。
 今年の中学入試の特徴は、大学附属や系列の中学が改革を早めたことで受験者を集めたこと、午後入試が定着してきたこと、入試日程の細分化やコース別入試、二科目入試・四科目入試など、さまざまな工夫で受験しやすいよう工夫されたことだろう。コース別入試のなかでも難関大学コースが人気を集め、特待生選抜も例年にない高い倍率がみられた。難関校には根強い人気があるが、今年はどのレベルにおいても受験生が自分の学力に見合った学校を手堅く受験する傾向がみられた。
 私学には、コミュニケーション力を重視して行事を大事にするところや、小学生の体力低下を受けて、体力を付けるためにスポーツに力を入れるところも増える傾向にあり、それも保護者に評価されている。
 併願校数は平均五・五校(昨年五・四校)。昨年より〇・一ポイント上がったのは、千葉・埼玉の受験生が公立一貫校や地元私立中学の一月入試の後、二月一日、二日、三日と東京の私立中学を受験する傾向が一層強まったとみられる。近年、新線の開通や路線の乗り入れなどで通学の便が一層よくなり、従来であれば地元の私学へ通っていた生徒も、千葉・埼玉から東京へ、神奈川から東京へと受験生が首都圏内で流動化しているようだ。

男子伝統校に人気
女子校、共学校大幅増


 今年は特に千葉と埼玉で中学受験率が上昇したが、千葉では渋谷教育学園幕張が一次・二次合わせて昨年とほぼ同数の三、二三三人の応募者数だった。共学化して以来一層人気の高まった市川は若干増えて四、五一八人。昭和秀英、聖徳大学附属、東邦大東邦、東海大浦安、千葉日本大学第一、和洋国府台、国府台女子などでも応募者が増加した。江戸川学園取手は三、二六〇人と昨年より四五〇人も増加。麗澤は二月四日午後入試を増やして応募者も大幅に増加した。芝浦工大柏は昨年より応募者を多少減らしたが、これは昨年の入試の倍率が高かったためとみられる。専修大松戸の二回目・三回目は昨年同様四十倍以上の倍率だった。
 埼玉では変わらぬ人気の浦和明の星女子が、応募者は若干減少したものの二、三八四人を集め、大妻嵐山は二、〇三三人と若干昨年を上回った。また、春日部共栄、城北埼玉、獨協埼玉、星野学園、埼玉栄、埼玉平成、栄東、開智、淑徳与野なども増加した。このうち埼玉栄では第一回・第二回試験が共に倍率三十三倍以上、第三回は八二・三倍(募集十人)にもなった。
 都内私立中学で応募者が増加したのは、男子校では麻布、開成、海城、暁星、慶應普通部、芝、芝浦工大、成城、高輪、法政第二、本郷、武蔵工大付属、武蔵、立教池袋、早稲田など。このうち武蔵工大付属では四、三一一人と昨年より四七〇人も増加したのが目立った。男子校は伝統校も多く、人気は変わらず高いうえ、今年は受験者全体が増えたことで大半の男子校で応募者が増加していた。
 女子校では鴎友学園、大妻中野、学習院女子、吉祥女子、共立第二、共立女子、恵泉女学園、麹町学園、十文字、頌栄女子、玉川聖学院、東京女学館、トキワ松、普連土学園、八雲学園、山脇学園、三輪田学園、昭和女子大学附属昭和などで増加。女子校は今年、午後入試や入試日を増やしたところが多かった。年々難度の上がる豊島岡女子の人気は変わらず、今年は定員を四〇人増やしたこともあって応募者が二、九一四人と昨年より三〇〇人多く集まった。最難関の桜蔭は微減した。鴎友学園や吉祥女子はキャリア教育が評価されて応募者が増加したようだ。一方で、応募者が少なく、厳しいところも一部にみられた。
 共学校ではかえつ有明、渋谷教育学園渋谷、多摩大附属聖ヶ丘、多摩大目黒、東京成徳大、早稲田実業などで増加。かえつ有明(旧・嘉悦女子)は昨年度から臨海副都心・有明に校舎を移転し共学となって、総合進学コースの入試を一日・二日に、難関大学コースの入試は同午後に、四日・五日も入試を行い、また二科目入試、四科目入試も行うなどきめ細かい対応で、昨年より六〇〇人多い二、六九一人の応募者を集めた。順心女子学園は二〇〇八年度から広尾学園と改称し共学化するが、その最初の入試の今年は大幅に応募者が増えたようだ。上野学園も共学化。法政大学第一は法政大学と校名変更し武蔵野市から三鷹市に移転、共学化して応募者が増加した。

進学実績校が増加
午前午後の二回入試増える


 神奈川では鎌倉学園、サレジオ学院、聖光学院、逗子開成、桐光学園、桐蔭学園、桐蔭中等、神奈川学園、鎌倉女学院、鎌倉女子大、聖セシリア、横浜英和、神奈川大附属、関東学院などで増加した。
 富士見丘は横浜富士見丘学園中等教育学校に変更し旭区に移転、応募者も増加した。神奈川はキリスト教主義のところや、進学実績を上げているところも多く、男子校、女子校とも例年安定して受験生を集めている。人気校の一つ、男子校の浅野が微減したものの、それでも二、二一七人の応募者数だった。
 今年の入試日程の特徴は、午前と午後の二回入試をするところが増え、それも一日から三日まで連続して実施したところもあり、全体として入試の回数が増えた。午後入試が受験生を集めやすいのも、午後入試実施校では試験当日に合否発表するところが多く、受験生にとっては、合格していれば翌日以降に上位校へチャレンジすることができるためとみられる。しかし、今年は午後入試の合格者で入学を決める受験生も増加したようだ。ただ、昨年よりも一層入試日が増え、試験回数が増えており、当然受験生の動きが複雑になり、学校側からみると、合否ラインの線引きがいちだんと難しくなったといえる。入試科目を見ると、難関校のほとんどは四科目入試だが、一般的には二科目入試と四科目入試を同日に実施するところが多くなった。さらに、特選クラス入試や難関大学コースを別枠で実施するところも増えた。
 今後の動きとしては、二〇〇八年度に明治大学付属明治が千代田区から調布市に移転、共学化を予定。日本工業大学付属、鶴見大学附属鶴見女子、東星学園も共学化を予定している。

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