こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2007年3月13日号二ュース >> VIEW

記事2007年3月13日 2059号 (6面) 
学校防災と危機管理研修会 日私教研
緊急事態に冷静な判断と行動
阪神、新潟大震災体験
山内甲陽学院高校教諭、八子中越高校教頭が対応や課題発表
財団法人日本私学教育研究所は昨年末、東京・市ヶ谷の私学会館で「学校防災と危機管理研修会」を開催した。研修会では中森広道・日本大学文理学部助教授が「地震と学校防災に関する課題」をテーマに講演したほか、新潟中越大震災を体験した八子元・中越高校教頭と、阪神・淡路大震災を体験した山内英正・甲陽学院高校教諭がそれぞれ当時の学校の対応や、課題などを発表した。


 このうち八子教頭は、防災計画要綱も策定したが、マニュアル通りにはなかなか進まず、臨機応変な対応が一番効果的だったこと、学校の被害に関しては、被害状況を記録した写真が後の補助金査定等に非常に大切だったこと、地震に対する怖さの感覚が人によって異なるため対応を巡って意見をまとめる際の障害になることなどを指摘。
 また震災後は、ガソリンが容易に手に入らないため、常に車にはガソリンを半分以上入れておく必要性を強調した。
 このほか、大震災を通じて、感じたこと、考えたこととして、(1)人とは暖かいものであること、(2)生徒・職員の安否確認の難しさ(通常の連絡網は機能しない)非常時には生徒から学校または担任への情報も大切なこと(3)公衆電話の再認識(4)防災訓練の大切さ=尊い命を守る訓練(5)近隣に住む職員が緊急事態に対応できる態勢を整えておく必要性(6)施設の安全確認(対震度、地域の地盤、周囲の建造物)(7)安全性の再認識(落ち着いた行動)(8)情報の一元化(指揮命令系統)(9)非常出入り口の施錠の問題Iカセットコンロは常備品J携帯電話は十分に充電、車にも携帯用充電器が必要等を挙げた。
 一方、山内教諭は、震災後、学校に被災者が詰めかけてくるが、被災者に対して学校として行うことと、ボランティアが中心となって運営する避難所として行うことを、割り切って線引きする必要があり、学校が地域を丸抱えすることは到底無理だとした。
 また教室を被災者に開放することで学校の再開が遅れ、その結果、生徒の学習再開が遅れること、また入学時期にぶつかり、別の学校に入学手続きをされてしまうケースもあった事例などを紹介した。学校に押し寄せてくる人は、良い人ばかりではないため学校内の風紀や防犯も課題だとした。
 大震災後に関しては、建物の耐震基準のチェックはもとより、薬品が落下、散乱し最も危険な状態だった化学教室については、幸いにも発火や有毒ガスの発生を免れたが、薬品に関しては、直ちに地下倉庫に移し密閉・保管した。救急備品は保健室を中心に充実し、自動体外式除細動器(AED)を設置し教職員に対して講習を行ったと報告。
 災害時、最も痛感したのは水の問題で、飲料水に関しては、同校のオーナーが清酒の辰馬本家酒造のため、宮水の提供を受けられたが、周辺地域では河川ですら底が割れて水がなくなったという。最後に山内教諭は、生徒や教員に関しては、いかに自らの判断で自主的に行動できるかが重要で、そうした教育の必要性を強調した。震災後、山内教諭は震災史料の保存・刊行に精力的に取り組んだ。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞