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記事2007年2月23日 2057号 (4面) 
産学連携 (5) ―― 明治大学商学部
日本商工会議所と包括提携

 明治大学商学部(福宮賢一学部長、東京都千代田区)は一月十六日、同大学アカデミーコモンで、日本商工会議所(=日商、篠原徹常務理事、東京都千代田区)と、産学連携による実務的キャリア教育支援モデル事業構築についての包括提携を結んだ。この協定は、地域連携を活(い)かした地方活性化を担う学生の人材育成を目指すもので、大学教育と産業界との連携による人材教育モデルの一つとして位置づけられており、注目されている。


実務的キャリア教育支援モデル事業
日商の検定試験支援も合格すれば単位に認定


 明治大学商学部は二〇〇六年、創立百一年目を迎え新たな教育改革に取り組み始めた。この教育改革は「Project101 (ワン・オー・ワン)知の融合と創生」と総称し、二〇〇六年度から順次実行に移している。「この改革は一貫して人材育成教育に根ざしている。包括提携はより一層の人材育成教育の充実を図るもので、『地域を活かした地方活性化を担う学生の人材育成支援』を基本コンセプトに置いている」(福宮学部長、当日記者会見)。
 この提携に向けて中心となって活動してきた横井勝彦商学部教授は、目指す三本柱を指摘する。
 (1)大学と日商との相互交流という視点から、日商関連の組織で、学生が活動することによって、企業は学生の視点を商品開発や企業経営に組み入れることができる。これは、大学にとっても学生を実践の場で教育することができるというメリットがある。「大学の教育力とともに、地域の教育力を使って学生を教育することができる」(横井教授)。
 具体例として、まちづくり・特産品開発・地域ブランドづくり・観光振興などを通しての地域活性化や地域振興を目的とするプロジェクトに関する各地商工会議所と同大学商学部との間のマッチング、地域活性化のための講座企画と同大学商学部の講師派遣、地域活性化やまちづくりに関する各地商工会議所と同大学商学部との共同研究――などが挙げられている。さらに、起業家育成実践教育の一環として、学内ベンチャー等を活用した地域活性化に資する各種イベント企画も考えられている。
 (2)日商の各種資格講座・セミナー・検定試験制度などによって、学生のキャリアアップを図る。商学部のカリキュラムに日商PC検定試験・電子会計実務検定試験はじめ、各種資格試験の受験を支援する制度を設け、正規のカリキュラムに組み込み、合格すれば単位として認定することも考えている。
 (3)地方の活性化に寄与するような後継者育成を目指した地域連携を行う。地方活性化には産業の発展を担う後継者育成が必(ひっ)須(す)条件だという認識の下に、「学生は出身の地元を見直す良い機会でもある。事業承継にかかわる実践的な啓(けい)蒙(もう)教育を行っていく」(横井教授)。各地域で特徴的な企業や日商の役員企業による事業承継と人材育成をテーマとした企業人講座や、企業人と学生との交流のためのセミナー・シンポジウムを開催していく。「学生が長期の休みに帰省したときなどに、地元の商工会議所のセミナーや講演会に参加する機会を、積極的に持つようにする」(横井教授)ことを考えている。
 一方、日商は人材育成に当たって、@雇用のミスマッチの解消A地方に立地する企業の人材確保B若年者の就業能力の向上と強化――を基本方針に掲げ、とりわけ大学との連携を通じて、若年者の職業意識形成に資する取り組みや、産業界が求める人材と大学教育が目指す方向と合致するような取り組みを行ってきた。
 「全国五百二十カ所に商工会議所があるが、会員の悩みは後継者の育成だ。学生が事業を承継し地域で活躍するために、学生等を対象に実践的な啓発教育を行う」(篠原常務理事、当日記者会見)。


広域連携支援で商店街活性化等10のプロジェクト
大学と地域の教育力で学生育成


 また同大学は現在、「広域連携支援プログラム――千代田区=首都圏ECM(Education Chain Management)――」(二〇〇五年、文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム=現代GPに採択される)に取り組んでおり、十のプロジェクトが進行している。この取り組みは、大学の教育力が地域社会に貢献すると同時に、地域の教育力で学生を育てるという相互関係によって、これまでにない学生教育を発揮している点が実績として高く評価されている。
 このプロジェクトの一つに「空き店舗事業によるマーケティング教育の実践」がある。商学部二年の学生による企画で、東京・神田駅前で店舗運営を行っている。横井教授によると、「商店街の活性化を目指し始めて一年たつが、学生たちにその成果の発表を聞くと、学生たちの成長振りが実感できる」と言う。
 「『地方活性化人材育成プロジェクト』を学部の教育体系にどのようにリンクさせ、カリキュラムに組み入れるかが大きな課題となってくる。学生の職業意識を高め、学生が積極的にプロジェクトに参加し活動できるようにしたい」と横井教授は期待を寄せている。



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