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記事2007年2月13日 2056号 (2面) 
私大連盟国際教育・交流推進協議会
派遣留学生の安全、危機管理
事故対策の模擬訓練で迅速に対応
日本私立大学連盟(会長=安西祐一郎・慶應義塾長)は昨年十二月八日、明治大学アカデミーコモン(東京都千代田区)で二〇〇六年度国際教育・交流推進協議会「派遣留学生の安全対策と危機管理」を開催した。会では事故対策のシミュレーションの実施の重要性などが指摘された。冒頭に国際教育・交流委員会担当理事の飯野正子・津田塾大学学長は「海外留学、語学研修を通じ、社会の多様性と接触させることが学生の自立につながる」などと指摘した。さらに国際教育・交流委員会委員長の林堅太郎・立命館アジア太平洋大学副学長は日本の留学生の割合について「高等教育は国際レベルと比較したら低いと認めざるを得ない」と話した。
 発題では大野高裕・早稲田大学理工学術院教授・国際部長が「派遣留学生の危機管理の現状」と題して自校での取り組みを発表した。早大の海外拠点であるオレゴン、ボン、北京、シンガポール、タイの駐在員は危機管理上の情報収集を行い、留学センターへ報告する。派遣留学生が事故にあった時は現地で迅速に対応に当たる。この対応により大野部長は「現地にいることで、まず身柄を確保でき、大きな事故を未然に防ぐことができる」と話す。また一昨年の夏からは予防策の一環として緊急事故対策シミュレーションを実施。「アメリカにて、バス横転事故により十八人の留学生が死傷」などの具体的な設定のもとで、家族やマスコミへの対応、情報収集、さらには職員を現地に派遣する費用、飲食費、見舞金などのシミュレーションを行った。大野部長は「情報が入ってくるにつれ、次第に本当に事故が起こっているかのように感じ、勉強になった。学生を送り出す自信が持てるようになった」と言う。
 また服部まこと・中部大学客員教授・NPO法人JCSOS(海外留学生安全対策協議会)理事は、米国の大学における性暴力の深刻化の事例などを報告した。事故対策組織、シミュレーションの構築、そして可能であればマニュアルの作成も指摘した。服部理事は「日本の場合は縦割り組織なので、横断的に取り組むことが重要」と話した。
 この後、中嶋瑞枝・外務省領事局海外邦人安全課海外相談センター室長が「海外における安全管理」をテーマに話した。海外での安全のための対策として、「自分の身は自分で守る」という意識、安全情報の収集・分析の知識、被害に遭遇した場合に備えた事前準備、海外旅行傷害保険への加入、連絡の徹底、パスポートの管理、健康管理とメンタルヘルス・ケアなどを挙げた。また行動の三原則として、目立たない、行動を予知されない、用心を怠らない、と指摘した。

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