こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2007年11月3日号二ュース >> VIEW

記事2007年11月3日 2081号 (6面) 
産学連携 (7) ―― 神奈川大学
りそな銀行と包括的連携協定を締結
地域活性化・発展に貢献

神奈川大学(神奈川県横浜市)はこのほど、株式会社りそな銀行と地域活性化・発展のための包括的な連携についての協定を結び、この提携により、同大学は学生参画型の新しい連携の構築を含め、地域社会の活性化・発展に積極的に取り組む。これは、同大学の研究成果の地域社会への還元、同銀行の顧客へのサービス充実を図ることに加えて、学生には就業体験の機会や実地教育の場を提供していく考えが基本にある。




インターンシップも推進
学生参画の新しい連携構築


 同大学は、社会貢献の一環として、「みなとみらいエクステンションセンター」での社会人対象の多彩な生涯学習講座などに取り組んでおり、年間三千人が講座に参加している。今回の連携はそれに一歩踏み込んで、地域に根ざした幅広い貢献を展開するためという重要な意義を持っている。
 この協定は、両者が広範囲の連携による相互協力を行い、人的・知的資源を積極的に交流することで、「地域社会との連携を強化することにより地域社会の活性化・発展に貢献していく」ことを目的としている。
 相互協定は、(1)大学発地域社会活性化への取り組みの推進を中心に、(2)学生にインターンシップ受け入れ先の紹介(3)法科大学院「無料法律相談」の、同銀行取引先企業に対する紹介(4)産学連携の推進――を主な内容としている。
 「これらの取り組みを通して、りそな銀行と大学との間で地域貢献という新しい連携につながっていくのではないでしょうか」と小林孝吉・事務局次長は指摘する。
 このうち、学生インターンシップ受け入れ先は、キャリア教育にとって大きい意味を持つという。
 同銀行の取引先ネットワークを活用し、学生の受け入れに積極的な、主に神奈川県内に営業拠点を置く企業を学生に紹介することで、地域と大学の連携を深める方針だ。八月に約二十人の学生がインターンシップとして、同銀行の神奈川地域の店舗での実地研修を行った。
 また、企業や地域とのコラボレーション企画を検討し、大学発地域社会活性化への取り組みを推進している。この取り組み推進を強化するために、同大学の学生と職員、および同銀行の行員約十五人で「地域社会活性化ワーキンググループ」を六月に立ち上げた。第一回ミーティングでは、商店活性化への取り組みや大学祭の地域への広がりについての意見交換を実施している。

スーパー・エマルション燃料を開発
大学発技術で情報提供を推進


 産学連携の推進の取り組みでは、同銀行との有機的なネットワークを一層構築していく。具体的には、同銀行は取引企業からの産業技術についての相談に対し、同大学を紹介し、技術の実用化などをサポートする一方、同大学は主に実用可能な技術や商品などについて、同銀行のネットワークを通じて情報提供、協力企業の開拓などを推進していく方針だ。
 実際、同銀行は、同大学が開発した「スーパー・エマルション燃料」について、協力企業を紹介するという支援を行っている。この「スーパー・エマルション燃料」は、従来の界面活性剤による乳化法に代わる新しい「三相乳化技術」によって、排気ガス中の有害成分を大きく削減し、京都議定書や国土交通省の次期排出ガス規制をクリアする画期的なものだ。
 現在、大学発ベンチャーとして未来環境テクノロジー株式会社(代表取締役社長=貝田泰雄学校法人神奈川大学常務理事・CTO最高技術責任者=田嶋和夫工学部教授、横浜市、二〇〇七年八月)を設立し、実証実験などによって、環境効果・効能を確認し、さまざまな分野での実用化に向けて研究・開発を進めている。
 さらに、同大学法科大学院のカリキュラムの一つである「リーガルクリニック」の一環として行われている無料法律相談を、同銀行の取引先企業に紹介する。大学と銀行が連携し、無料で幅広く相談にこたえていくもの。
 これらの取り組みは「大学の社会的責任を果たすことによって、大学の価値を社会に示していこうという考え」(小林事務局次長)の表れだ。
 同大学は、二〇〇六年度教育改革に合わせて、新たに「成長支援第一主義」というコンセプトを掲げている。このコンセプトには、学生一人ひとりに自信と誇り、希望を持たせ、同大学に入って自分は大きく変わったという確信を持たせるという考えが含まれている。
 来年八十周年を迎える神奈川大学は、「質実剛健・積極進取」という建学の精神を基に将来構想としてグラウンドデザインを示していく方針だ。改革を進めていくことで、同大学は二十年後の創立百周年のころにはより確固たる地位を示していきたい考えだ。



記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞