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記事2007年11月13日 2082号 (1面) 
中教審初中分科会・教育課程部会が合同会議
課題山積大学入試改革
入試多様化に批判
国に一定の関与期待の声も
中央教育審議会の初等中等教育分科会と教育課程部会は十一月七日、都内で合同会議を開き高校と大学の接続を話し合った。会議では大学入試制度の多様化や少数科目による受験の広がり、AO入試の形骸化を問題視する意見、一定の規制を求める声、高校教育の出口♀ヌ理の必要性、受験競争の過熱を防ぐ年に数回の受験機会の提供などさまざまな意見がだされたが、意見の集約には時間を要しそうだ。高校と大学とでは文部科学省の所管局が異なる点も改革を難しくしている。

 十一月七日の合同会議では、中教審の大学分科会の制度・教育部会「学士課程教育の在り方に関する小委員会」が九月十八日にまとめた審議経過報告「学士課程教育の再構築に向けて」のうち、高大接続に言及した部分が高等教育局の担当官から、また教育課程部会の高校教育課程改善を踏まえた大学入試改善等を巡る審議(七月十三日)状況が初等中等教育局の担当官からそれぞれ説明された。
 このうち学士課程教育に関する審議経過報告では、多様化を続けてきた大学の入学者選抜について大学全入時代を迎え、改めての検証が必要で、AO入試に関しては学力不問の状況が生じているのではないか、との指摘もあること、先の高校での履修漏れ問題では調査書の信用が失墜したことなどから、大学入学者選抜の見直しの必要性が報告された。
 同小委は平成十九年度中に報告をまとめる予定だが、梶田叡一・初等中等教育分科会長(教育課程部会長)は、「(大学の質保証の観点から)何かネットを被せないと大学は信頼を失う。ある種の基準を出して各学校が取り組んでほしい」との考えを明らかにした。
 この日の審議では、公立高校長の委員から「(一部の)大学入試の難しさが高校で未履修問題を引き起こしている。大学経営のための入学者選抜が高校教育を捻じ曲げている」と経営優先の入学者選抜を厳しく批判、入学者選抜では文系理系に分けず幅広い科目を課すよう求めた。また公立中学校長の委員からは高校教育が大学入試にシフトし、塾通いが広がっていること、大学合格実績重視の私立学校は問題などと課題等を指摘した。
 そのほかの委員からも、複雑化しすぎた大学入試の簡素化に向け、国が一定の関与を果たすべきだとする意見も聞かれた。また国立大学教授の委員からはAO入試の形骸化を問題視する意見が出される一方で、別の国立大学学長の委員からはAO入試ではさまざまな工夫をして受験生の勉学への意欲や知識等活用力を見ていることなどが説明され、「実態を見て議論してほしい」との注文も付けられた。学生募集をはじめとして経営努力が求められている国立大学では、AO入試や推薦入試などでも大学の規模などで考え方に開きがあるようだ。さらに大学入試センター試験についても見直しが必要だとする意見があり、今回の学習指導要領の改訂論議で、記述式など思考力・判断力・表現力等の重視が打ち出されたことから、今後の大学入試でもそうした出題の充実が課題となりそうだ。一方、教育課程部会が七月に行った審議では、大学は高校での学習暦を丁寧に見てほしいとの意見が高校関係者から出されたが、大学側からは事務負担増への考慮を求める意見も出された。教育課程部会が十一月七日に公表した「審議のまとめ」では、大学入学者選抜の現状は高校生の学習意欲などに大きな影響を及ぼしているとして、中教審全体で改善・工夫策の検討が必要としている。

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