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記事2007年1月3日 2053号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
今後は振興計画策定へ
教基法、いじめ、自殺、未履修
再生会議の動向論議中教審懇談会
中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)は昨年十二月二十五日、三田共用会議所(東京都港区)で委員懇談会を開催し、改正教育基本法、いじめ・自殺問題、高等学校での未履修問題、教育再生会議の動向について議論した。委員からは再生会議について「各省庁にまたがる横断的な問題を扱ってほしい」などの注文もあった。

 冒頭に文部科学省より結城章夫事務次官があいさつし、改正教育基本法が昨年十二月二十二日に公布、施行されたことに「教育改革を重要課題に掲げる安倍内閣にとって、教育の憲法である改正教育基本法が成立したことによって、ようやくスタート台に立ったと言えるのではないだろうか。今後は国民への周知、関係法令の改正、教育振興基本計画の策定にしっかりと取り組んでいく」と意気込みを示した。
 その後局長や審議官より具体的な教育基本法の内容、高等学校における必履修科目の未履修、いじめ・自殺の件、教育再生会議の設置の四つの議題について、これまでの経緯が説明された。
 意見交換ではスポーツジャーナリストの増田明美・大阪芸術大学教授が高校の未履修問題について「校長の自殺まで至った。大学入試の負担が背景にあると思う。教育再生会議では塾の禁止が言われているようだが、さらに高校が塾化してしまう。受験システムの研究が必要」などと指摘した。
 改正教育基本法について、田村哲夫・渋谷教育学園理事長は「教育振興基本計画が盛り込まれたことが画期的だ。新たな基本法ができたから終わりではなく、これから始まるということでお願いしたい」と話した。
 急ピッチで進んでいる教育再生会議についてはけん制する意見も飛び出した。
 再生会議の有識者委員でもある中嶋嶺雄・国際教養大学理事長・学長は「報道などから混乱している印象があるかも知れないが、中教審、文科省にお願いしなければならないもの(テーマ)もある」と強調した。
 だが角田元良・聖徳大学人文学部教授は教員免許更新制度について、「(中教審答申と)かけ離れたものが出てきている」と不快感を示し、再生会議には「各省庁にまたがる問題や、予算、人的措置を含めたものを審議していただくとありがたい」と要望した。
 渡久山長輝・(財)全国退職教職員生きがい支援協会理事長も免許更新制度について「中教審では十年で更新すると提言したが、再生会議ではもっと早く(更新)するべきとの報道があった。指導力不足教員に対する法律もあるのだから、その法律で対処すべき」と指摘。また基本法第八条で私立学校に関する規定を新設したことを評価し、「特に高等教育は私学が多くを占めている。法律に盛り込まれたということは、重視していくということ。今後の検討課題である」と続けた。
 私立学校について鳥居会長も「憲法八十九条では公金は公の支配に属さないものは使われず、昭和五十年の私学振興助成法でようやく少し使われるようになった。全国二百八十万人の大学生のうち二百十万人は私学で学び、幼児教育も同様である。愛国心ばかりマスコミは取り上げるが、これだけの大きさを占めている私立に、国が振興を義務化することが求められていることも国民は知らない」と報道の在り方にも懸念を示した。

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