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記事2007年1月23日 2054号 (1面) 
私大等経常費補助の内容変わる 私学関係予算案
厳しい財政下の中柔軟な大学支援へ
特別補助と教育研究高度化特別補助を改編
ゾーン制、メニュー化導入
平成十九年度の私学関係政府予算案の詳細がこのほど明らかになった。私学関係予算項目の中で大きく内容を変えるのが「私立大学等経常費補助」(予算額=前年度比〇・九七%減の三千二百八十億五千万円)。特別補助と私立大学教育研究高度化推進特別補助を全面的に改編、ゾーン制・メニュー化を導入し、規模の異なる様々な私立大学にとって使い勝手の良い補助金に改める。

 私立大学等経常費補助を巡っては、「厳しい財政事情の中でメリハリのある大学支援を行う必要がある」「退場すべき大学を支えるなど護送船団のための私学助成は疑問」との批判があった一方で、私立大学内部からも特別補助に関して、「大学・短大共通の補助項目のため、大規模大学にとっては、補助金交付の上限額が低過ぎ、逆に小規模大学にとっては補助金申請の下限額が高過ぎる」「一般補助は大学側の持ち出しがゼロだが、特別補助は補助率二分の一の場合、残りの二分の一相当額は、丸々持ち出しになる場合がある。大学の負担が重い」「補助項目が多種多様で、補助金確保のためには出来るだけ多くの項目に申請する必要があり、相当無理して申請している場合がある」などといった指摘があった。
 そこで十八年度までの特別補助と私立大学教育研究高度化推進特別補助を全面的に改編し、ゾーン制・メニュー化を導入することにした。ゾーンにはA「地域社会のニーズに応える教育の推進」、B「個性豊かで多様な教育の推進」、C「教育研究活動の高度化・拠点の形成」の三種があり、Aには小規模校が、B、Cと進むにつれ規模の大きな大学が活用しやすい補助項目が配置されている。例えばAゾーンでは「知の拠点としての地域貢献支援メニュー群」や「就学機会の多様化推進メニュー群」などが充実、一方CゾーンではAゾーンにはほとんどない「先端的学術研究推進」や「大学院教育研究高度化支援」のためのメニューが充実している。
 そのためこれまでのように、補助金獲得のため無理をして出来るだけ多くの項目に申請を出すといったことの改善や、学校の規模にあった事業展開がしやすくなり、大学の資金持ち出し分の削減も期待できる見通しだ。
 結果として補助金環境も各大学等が特色をより鮮明に出しやすい状況となり、特色ある教育研究の展開を通じて私立大学の活性化、我が国の教育研究の高度化が期待される。これらの各大学の特色を活かせるきめ細かな支援には私立大学等経常費補助のうち一般補助(二千百六十七億七千九百万円)を引いた特別補助(一千百十二億七千百万円)の中から一千七億二千九百万円を充てることにしている。
 また各申請ゾーン共通の項目として、「新たな学習ニーズ等への対応」「高等教育機関の質の確保」「特定分野の人材養成支援」(これらを合わせた予算額百一億四千二百万円)の補助項目も設ける。各大学は基本的には一つのゾーンを選択することになるが、設置学部などによっては複数のゾーンを選択する場合もでてくる。
 そうした一方で、定員割れの大学等に対する助成の見直しを一般補助の中で行うことにしており定員割れ等が続いている大学等について、一定期間で改善傾向が見られない場合は、補助金の減額を強化する。現時点で、何年程度で判断を下すかは未定だが、同省私学助成課では「トレンドを見たい」と話している。定員割れによる補助金カットについて、現在の制度では補助金の一〇〇%カットに次いで重い減額措置は一五%カットのため、新たに二〇%、三〇%といった刻みを設けることになる。
 それと並行して定員割れの解消等に向けて、募集停止や改組転換、定員減、統合等により適正規模への脱皮を図る大学等に関しては、最長五年間の特別補助(十九年度予算額は四億円)を設けて支援を行う。

高校等経常費補助は前年度同額
きめ細かな学習指導、幼稚園で一種免取得促進


 私立大学等経常費補助以外の私学関係予算では、「私立高等学校等経常費助成費等補助」が前年度比同額の一千三十八億五千万円となった。
 十九年度では特に一般補助で、少人数教育等きめ細かな学習指導の推進や幼稚園における一種教員免許状保有の促進等を重点的に支援する。
 また一般補助では、幼稚園から高校までそれぞれ補助単価の引き上げを行う。高等学校(中等教育学校後期課程)の補助単価は前年度比一・一七%増の五万一千九百六十円、中学校(中等教育学校前期課程)は〇・六%増の四万五千五百四十六円、小学校は〇・六%増の四万三千八百九十八円、幼稚園は一・一七%増の二万二千二百五十二円。このうち生徒数の減少が大きな高校に関しては、総額で五億一千四百万円の減額となる。そのほかの校種は総額でも増額する。
 また特別補助では少子化対策として、子育て支援策の充実を図る。
 施設関係補助金では、「私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助」が、前年度比八億円(七・〇%)減の百六億三千四百万円。六年連続の減額。そのうち学校施設耐震改修やバリアフリー化などの私立大学等防災機能等強化緊急特別推進事業は前年度同額の十八億八千七百万円。その他の私立大学学術研究高度化推進事業、教育研究装置整備費補助、情報通信施設、情報通信装置はいずれも前年度比減額となった。
 「私立高等学校等施設高機能化整備費補助」は、前年度と同額の二十億七千八百万円。
 内訳は、校内LANの整備や施設のバリアフリー化、カウンセリングルームの整備などの高機能化整備費補助が前年度比一億六千万円減の一億九千万円、防災機能強化施設整備費補助が同一億六千万円増の十七億九千八百万円、私立学校エコスクール整備推進モデル事業は九千万円。
 一方、設備関係は、「私立大学等研究設備等整備費補助」が、前年度比二億四千五百万円(三・八%)減の六十二億三千二百万円。また「私立高校等IT教育設備整備推進事業」は、ハード、ソフト両面のIT教育設備の整備を支援するものだが、予算額は、前年度比二億円(一五・四%)の減額で二年連続のマイナス。
 このほか「私立学校施設高度化推進事業費補助」(利子助成)は、前年度比一千二百万円減の十一億七千七百万円。
 日本私立学校振興・共済事業団の貸付計画額は前年度と同額の六百億円。

災害、耐震等で補正予算計上

 平成十九年度の政府予算案と合わせて昨年十二月二十日、十八年度の補正予算案二千五百二十四億円も決まった。このうち私学関係は災害復旧関係で二千六百万円、耐震関係で二十億円。文科省全体の耐震関係補正予算額は二千三百四十一億円。この補助は、耐震診断により耐震強度が著しく低い施設について耐震補強するための補助。対象となる校種は幼稚園から大学まで。

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