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記事2006年9月23日 2040号 (2面) 
教員免許更新制の導入に関する検討会議
更新講習現職教員に重点化
講習免除に賛否
私学団体も更新講習開設へ
 文部科学省の「教員免許更新制の導入に関する検討会議」(主査=山極隆・玉川大学学術研究所教授)は九月十三日、東京・港区のキャンパス・イノベーションセンターで第二回会合を開いた。この日は、前回の初会合で出された委員の意見や、主査が委員の中から指名した資料作成チーム八人の意見、新聞報道、都道府県教育委員会等の意見を基に事務局(文部科学省)が作成した「主な論点についての検討経過報告」(A4版、4ページ)が報告され、それについて検討が行われた。

 経過報告は、十年ごとの教員免許更新で義務付けられる講習(三十時間)に関して、(1)受講対象・開設主体(2)講習内容(3)評定・判定(4)服務との関係等(5)受講の免除(6)条件整備について、主要な意見等をまとめたもの。
 それによると、更新講習を受講すべき対象者は、現職教員(常勤・非常勤教員とも、普通免許状保有者)に重点化すべきで、ペーパーティーチャーについては、コスト面から採用内定者などに限定すべきだとの意見が多かったとしている。講習の開設主体については、課程認定大学を含め大学一般を「原則」としており、受講機会を広く確保する観点から、そのほか、「付帯」として、大学からの委託や連携協力の下、教育委員会や校長会など相当の研修実施実績がある全国的な職能団体も含めるべきだとの意見があるとしている。
 この点に関して、同省の大木高仁・教職員課長は会議の中で、私立中学・高校関係では、財団法人日本私学教育研究所(田村哲夫理事長)がその対象となりうるとの考えを明らかにしており、同研究所でも実施に向けた検討が始まっている。
 また私立幼稚園関係では、財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構(三浦貞子理事長)が更新講習の開設主体を目指しており、すでに体系的な研修プログラムの研究を進めている。講習で課すべき課題については、(1)使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項(2)社会性や対人関係能力に関する事項(3)幼児児童生徒理解や学級経営等に関する事項(4)教科・保育内容等の指導力に関する事項を基本とする意見が大勢を占めており、このほか最近の知見を含める。
 この日は、主査の委嘱を受けた岩田康之・東京学芸大学教員養成カリキュラム開発研究センター助教授、狩野浩二・鹿児島大学教育学部助教授、千々布敏弥・国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官の三人の委員がそれぞれカリキュラム案を発表した。それらは、講習を受ける教員の最近の十年の事例を素材にしたケーススタディー等を中心にしたもの、意欲を高めることをメーンにしたもの、教員の資質力量の刷新等を趣旨としたものなど制度設計は様々だった。
 また経過報告では、更新で課される三十時間の講習内容については、五領域(各六時間)に分割し編成するべきだとの意見が多く、開設主体は三十時間すべてを開設する必要はなく、一領域でも可能とし、多様な開設者の参入を促進する、としている。評定・判定に関しては、教員による訴訟等に耐えられるよう客観的かつ公正・公平なものとする意向だが、教員としての適格性の判定は難しいとの意見もあり、詳細については固まっていない。ただ委員からは教員の人事考課は東京都などですでに始まっており、そうした面の応用の可能性を指摘する意見もあった。さらに経過報告では、受講の服務上の取り扱いについて、免許状が個人の資格であることから、研修命令には馴染まず、免許状の上進の場合と同様に、「職務専念義務免除」が妥当であることを示唆している。
 受講の免除に関しては、原則として免除は想定すべきではなく、慎重に考えるべきだとの意見がやや多いとしており、詳細な方向性は示していない。講習の免除をどこまで拡大するかは、更新制実施の事務量やコストとも関係する問題。学校関係者からは、学校教員の多忙さを理由に、かなり大胆な免除・読み替えの必要性を指摘する意見が複数上がり、また校長が落ちた場合、どうするのかといった意見も聞かれた。
 その一方で山極主査は、「十年に一度の研修すら受けないのか。教育の世界の考え方だけではだめだ。問題なのは指導力不足教員だけではない。この学力低下は何だ」と発言。県教育庁関係者からも、「『ぬるい』という声が出てくる。守りに入った議論でいいのか」との声も上がった。

財政的支援や苦情
処理体制等整備必要

 条件整備に関しては、開設者側、受講者側を問わず、国による財政的支援等を求める意見や苦情処理等の体制整備を求める意見が出ている。この点に関して同省では全国の都道府県教育委員会に照会を行っており、次回の会合(九月二十七日)で、教委の意向や要望が示される予定。同検討会議は今秋には「中核的な意見」をまとめる。

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