こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2006年8月13日号二ュース >> VIEW

記事2006年8月13日 2033号 (2面) 
教育情報化推進で理事長・学長会議
私立大学情報教育協会が開催
指導力向上、業績評価など意見発表
教員に求める教育力でも全体討議
 私立大学情報教育協会(会長=戸高敏之同志社大学工学部教授)は八月二日、工学院大学(東京・新宿区)で教員の指導力向上、業績評価制度の活用法などについて理解を深めることを目的に、「教育の情報化推進のための理事長・学長等会議」を開催した。
 このなかで早稲田大学の白井克彦総長は「大学力を高める教育戦略」と題して早稲田大学が取り組む実践を紹介した。学部横断的なオープンゼミ「テーマカレッジ」は専門教育の前に、一年生から参加する学際的なゼミだ。今年度は「ことばの科学」「感性と文化」「平和学」など二十九テーマ、二百四十二科目と多岐にわたり、主に新入生に対し「大学に来た」という雰囲気、講義に慣れさせることもねらいであるという。また「チュートリアル・イングリッシュ」では十週間(週二回、計二十回)の四人一組の少人数レッスンを展開。集中的に英語コミュニケーション力の向上に努め、現在約一万人の学生が受講している。
 人間科学部で行っている動画をインターネット配信するeスクールも紹介した。完全なインターネットによる授業コンテンツの提供で、スクーリングを義務としていないため批判もあるという。だがメリットとして、教育機能の時間的・空間的自由度の拡大や、録画した授業を公開することによる教育の質のレベルアップなどを挙げた。またeスクールの学生はレポートの内容などをみるとレベルも高く、ブラジルやロンドンの学生もいるという。白井総長はサポート業務をアウトソーシングしていることを話し、「学内だけでなく、外との連携がないと改革は難しい」と強調した。
 坪井和男中部大学学長補佐は同校の教育総合評価制度について発表した。教員の意識改革を目指したFD活動や評価・支援活動の実践が有効とし、ポイント制の導入により客観的な総合評価を行っている。来年度からはさらに発展させ、学生による授業評価の設問項目の共通化を一層図るとしている。
 全体討議では「教員に求められる教育力とは」をテーマに文科系、理工系、医学系の教授らによる意見発表が行われた。最初に井端正臣私情協事務局長が問題提起として、教育業績評価の導入について「評価する側もされる側も確固とした判断基準が明確になっていないこともあり、導入が進んでいない。教員の自主性を尊重し段階的に進めることが得策」と指摘した。
 河崎照行甲南大学副学長は、教育力改善として能力に基づく表彰制度・昇進制度、学生にも成績優秀者の表彰制度・授業料免除制度などを提言。
 玉木欽也青山学院大学経営学部教授は、授業評価においてeラーニング授業は評価しやすいことなどを挙げ、学生のアンケートから学習効果、満足度など多面的に評価することが出来ることを指摘した。向殿政男明治大学理工学部長は大学の特色を打ち出すことや教員の多様性、役割分担を尊重することなどを説明した。吉岡俊正東京女子医科大学教授は医科大学における教育力として、真正性の高い知識を得るための教育、基本となる知識・情報の体系的教育、専門家・熟達者として後輩を育てる能力などを話した。
 最後に今回の会議を総括し、決議として(1)大学ガバナンスを発揮し、教育力の向上に努める(2)学生への教育のさらなる改善としてFDの積極化と充実に努める(3)教育指標づくりの場をつくるため、文部科学省にも働きかける――ことを会場の約二百二十人の理事長、学長ら参加者とともに採択した。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞