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記事2006年8月13日 2033号 (8面)
ユニーク教育 (160) ―― 和洋九段女子中学・高等学校
今を大切に自分の個性を咲かせて
挫折や失望があっても めげずに苦しい道を
和洋九段女子中学・高等学校校長 濱名 言實氏 講話
 濱名校長 | 道程 高村 光太郎
僕の前には道はない 僕の後ろには道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちにさせた広大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の気魄(きはく)を僕に充たせよ この遠い道程のため この遠い道程のため (第一歌集から)
濱名言實・和洋九段女子中学高等学校長(東京都千代田区)の校長講話は、講堂のスクリーン上に映し出されたこの詩を読むところから始まった。 校長講話は高校で年三回(六月、十一月、二月)予定されている。濱名校長が日ごろから考えていること、ぜひ生徒たちに伝えておきたいことなどさまざまな分野にわたって約二十分間、話をする。校長講話は、生徒がたくましく生きるための指針となるもので、生徒にとっては貴重な位置を占めている。六月下旬に行われた校長講話は、随所に濱名校長の思いが込められていた。 同校は「和魂洋才」を創立の理念に掲げ、明治三十年に創立された。現在、この理念を発展させ、校訓を「先を見て齊(ととの)える」と定めている。この校訓は知性に満ちた、しかもその知性をひけらかさない奥ゆかしさを兼ね備えた女性を育成するという意味とともに、これからの社会で女性がたくましく生きぬくためには、生きる術(すべ)である基本を身につけておく必要性を説いている。 「青年は未来を語る、老人は過去を語る。皆さんは未来を語らなければならない」と切り出した濱名校長。二十四歳で上京した最初の場所が「上野駅」だった。ここが、人生の出発点と言う。当時を思い出すと、ふっと浮かぶ詩が「道程」だ。 「自分を意識し始め、女性として意識し始める十六〜十八歳は、人生観が確立するころでもある」と指摘した上で、「人生での苦しみ、つまづきが自分自身を成長させている。ここから新たな発見があり、経験から学び取ることができる。これが人生の知恵で、この知恵を生かす人間に成長してほしい。生きる目標や夢があれば、これが苦しみを乗り越える力となる。そうすれば、自分の後ろに道ができてくる」と強調した。 そして、自分の進むべき道を探すのに疲れたり、目標を見失ってしまったりした場合、「挫折や失望することがあっても、あきらめずに苦しい道を選んでほしい」と濱名校長は力を込めた。 「『春秋に富む』(『史記』年若く、将来性がある)という言葉を覚えてほしい」とした上で、「過去のことはあまり考えない。しかし、未来を当てにしてはならない。今を大切にしながら、自分の個性を咲かせてほしい」と生徒に呼び掛けた。 生徒たちにとって、自分の個性を高校時代に伸ばし、将来たくましく生きるための、勇気付けられた校長講話になったにちがいない。
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 生徒一人ひとりが道≠ノついて考えた校長講話 |
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