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記事2006年7月23日 2031号 (6面) 
地域振興に貢献 (7) ―― 大東文化大学
大学や専門学校が地域と連携

 いま、東京・板橋区の中板橋商店街の活性化に向けて、大東文化大学(和田守学長、東京都板橋区)と同商店街の住民との連携事業が始まっている。この商店街にある空き店舗を活用した「なかいた環創堂」は、活気のある商店街を取り戻すための、学生の活動拠点となっている。この連携事業の統括責任者は同大学環境創造学部環境創造学科主任の篠原章教授だ。



中板橋商店街の活性化へ
「なかいた環創堂」活動拠点に


 環境創造学部は地域に開かれた学部を理念に掲げ、社会科学系の教養・知識を活用しながら、地域(町づくり)や福祉などを含めた環境問題を解決できる人材を育成している。コースは都市環境、福祉環境、環境マネジメントの三つのコースを有している。
 従来、大学教員や区の職員が講師となって、地域住民や高校生も対象とした環境創造講座の授業を開講していたが、この場で、同大学や区が町づくりについての話を商店街に持ちかけたのが、きっかけだ。そして、中板橋商店街振興組合との話が進み、昨年七月に「なかいた環創堂」が開所された。 
 「なかいた環創堂」は現在、主として都市環境コースの三年生が中心になり、一年生から四年生まで二十五人の学生が交代で週三日、店舗を開けており、さまざまな調査、活動をしている。当初はどんな店があるのか、商店街の問題点は何かなどの聞き取り調査から始まった。開所から今までの活動は、商店街マップづくり(アンケート調査)、なかいた縁日への参加、クリーン大作戦の実施、地元小学生との懇親スポーツ大会実施、商店街ウィンターセール(「サンタトナカイタ」)の準備・実施、さくら祭りへの参加など、幅広く及んでいる。とりわけ、昨年十二月、商店街ウィンターセールで行われた「史上最大のプレゼント交換会」は、ポスターの飾り付けから始まり、路上芝居、パレードなどを行い、「商店街で若い力を発揮できた」(篠原教授)。
 毎月第三金曜日の夕方、交流を円滑に行うために商店街で商店街代表、区職員、学生、教員が集まり、定例協議(通称フライデーナイツ)を行っている。
 中板橋商店街には、東武東上線の中板橋駅北口を中心に三百店が存在、昔は活況を呈していたが、かつてのような面影がないのが現状だ。この連携事業は、まちづくりに関心のある学生を専任教員の指導の下に組織化して、中板橋商店街振興組合と協力しながら進められており、学生にとってはインターンシップ、あるいはボランティアの体験となり、研究面だけでなく、教育の視点からも大いに期待されている。学生たちは、住民との交流を通してマナー、仕事の段取り、コミュニケーションの取り方など多くを学んでいる。


環境問題解決できる人材育成
教育面と町の振興との調整が課題


 「学生にとっては、卒業後社会に出るための貴重な体験となり、大学も教育の一環としてそこに狙いを置いているところがあります。一方、都から補助金をいただいている関係上、地域が活性化しているという目に見えた成果(例えば数字)が必要とされます。この学生への教育面と町の振興という二つの面での調整が残ります」と篠原教授は課題を挙げる。
 また、環境創造学部では、板橋区の同大学板橋キャンパスに隣接している高島平団地活性化プロジェクトにも取り組んでいる。この団地には六十代の住民が多数居住しており、空き部屋も多いという。講座には団地住民、大学生、高校生、そして、教職員が参加、活発な意見交換が行われている。
 地域活性化という事業を通して、課題も見えてきたが、大学としての基本的な方向性ははっきりしている。
 「継続的に地域とかかわることで、学生が社会との接点をできるだけ増やし、体験を積むという、この繰り返しですが、この事業を通して、学生は組織の大切さと同時に自己を大切にすることも学びます。大学には教育と研究という二つの使命がありますが、教員は教育という点に自覚を持つべきではないか。基本的には教育の質をどう高めるかということに尽きると思います」と篠原教授は教育の視点の重要さを指摘する。
 今年も多くの活動が予定されている。その一つに学生が講師となり、住民に書道を教えることも考えている。「なかいた環創堂」を活動拠点にした地域活性化は、学生にとって貴重な体験として注目されるはずだ。





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