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記事2006年6月13日 2025号 (4面) 
産学連携 (4) ―― 和光大学
キャリアネットオークション(株)と連携

 和光大学(東京都町田市)は、今年四月から従来のインターンシップとは異なる「キャリアインターンシップ」を開始した。この「キャリアインターンシップ」は文系学生のコミュニケーション能力を生かしつつも、システム開発ができる優秀な人材を育成しようという試みで、企業からも大いに注目されている。



キャリアインターンシップ
学生の能力を評価
就職支援プログラムの一環


 「キャリアインターンシップ」の中心になって学生を指導しているのは、経済経営学部、経営メディア学科で、科目「メディアコンテンツ制作」を担当している加藤賢次郎専任講師だ。
 「キャリアインターンシップ」の仕組みはこうだ。在学中にシステム開発の勉強をしたい、あるいは、将来システムにかかわるような仕事をしたい、という学生が在学中にこれらの技術を身につける。一方、これらの学生を、人材教育や就職支援を手掛けている会社キャリアネットオークション〓(東京都港区)が学生の態度や能力などを適正に評価した上で、他のシステム会社に推薦(人材紹介)するという仕組みだ。「学生に対する就職支援プログラムの一環」(加藤専任講師)の意味を持つ。
 昨年一年間、加藤専任講師は講義、あるいはゼミで試験的にプログラムを実施していた。そのきっかけは、物流の企業のゼミ生によるホームページ作成の記事がキャリアネットオークションの目に留まったのが始まりだった。昨年度末には、企業のホームページを作成する実務研修を行った。HTML(ホームページを作るために必要な言語)から学んだ。実際の企業のホームページを二カ月半かけ、グループで協力して作り上げ、その企業の経営者の前でプレゼンテーションを行った。実務を運営する際には、グループ内のコミュニケーションや日報作成などシステム会社で働くための基礎も体験した。
 「一年間の成果として、学生のプログラミング能力の向上はもとより、グループ単位で実作業を行うといった、実社会に即した貴重な体験をすることができました。このことより、学生の就業意識が格段に向上しました」と加藤専任講師は成果を述べる。
 今年から組織的に行う方針だ。
 この仕組みは、特に中小企業のシステム会社にとっては評判がいい。中小企業は人材育成にかける時間、コストが限られている。そこで、即戦力となる人材が必要となるわけだ。また、文系出身の学生のコミュニケーション能力評価し、積極的に採用したいという企業が意外と多いという。講義ではプログラマーとして基本となるプログラミング技術を教える。まず、基礎をしっかり教えた上で、どの程度の技術を持っているか、実務プロジェクトに対してどのような点で力を発揮できるのか、企業にどのような貢献ができるのかなどをレポートにまとめ、システム会社に紹介するのだ。
 通常のインターンシップのように、短期間では個々の学生の能力では判断できない場合が多いし、その点、この仕組みは大学自体が学生の能力を保証するので、企業側からも喜ばれている。
 このような新しい取り組みは珍しいという。企業側は個々の学生の特性を見ることができ、採用に当たって学生とのミスマッチを防ぐことができるというメリットがある。学生の方でも、システム開発の勉強を行っているうちに、目的意識が明確になり、この方面に目覚めてくる学生もいる。
 最近、加藤専任講師は『文系学生のためのC言語入門』を発行。「システムエンジニアとしての基本スキルであるプログラミングの基礎を文系学生に覚えてもらおうということ」を狙いとしている。内容的には、コンピュータの基礎から中程度のプログラミングまで、今までの基礎知識がまったくない学生にとって分かるように構成されている。
 実際、加藤ゼミの学生とシステム関連の企業に興味がある学生を対象に、三年生の四〜七月にかけて、C言語やJAVAの講習を、九〜翌年二月ではグループ単位での実務作業(企画書、仕様書、工程書の作成)、三月に学校内面接、学校内企業説明を行い、四年生になってから推薦入社を行う予定になっている。
 「昨今、少子化、ニートなどの社会問題が起こっています。企業の人材ニーズは高まる一方です。このシステムは、学生の就業意識を高めるとともに、企業が必要とする人材育成に力を入れ、今までの大学教育より一歩進んだ教育体制を産学連携で構築していきたいです」と抱負を語る。



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