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記事2006年5月3日 2020号 (1面) 
教育基本法改正案を今国会提出
私学教育振興を明記
制定後初の基本法改正 教育振興基本計画策定へ
愛国心の表現で調整が長引く 公共意識尊重など新たに追加
 政府は四月二十八日、教育基本法改正案を閣議決定し、同日、国会に提出した。教育基本法の改正は、小渕総理が死去後、森前総理に引き継がれた諮問機関・教育改革国民会議が平成十二年十二月に「教育を変える十七の提案」の一つとして提言。それを受けて文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会が新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方等を検討、平成十五年三月に答申したが、与党の自由民主党と公明党で愛国心の表現等を巡り調整がつかず、協議が続いていた。教育基本法改正案提出は昭和二十二年の現行法制定以来初。改正されれば約六十年ぶりとなる。

 四月二十八日に提出された教育基本法改正案では、社会情勢の変化などから、現行法にはない「生涯学習」、「大学」、「私立学校」、「家庭教育」、「幼児教育」、「教育振興基本計画」等に関する規定が盛り込まれているのが特徴だ。四月十三日に公表された与党教育基本法改正に関する協議会の「最終報告」とほとんど変わらない内容となっている。
 特に改正案の前文では現行法が強調した「個人の尊厳を重んじ」に加え、「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた」人間の育成、「伝統の継承」に力点を置いており、行き過ぎた個人主義への反省から公共意識の尊重を図る考えだ。
 また第二条では、現行法第一条で規定していた教育の目的を五項目にわたって詳細に規定しており、豊かな情操と道徳心、創造性、自律の精神、男女の平等、公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、発展に寄与する態度、環境の保全に寄与する態度、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度などを養うことを挙げている。さらに第八条では私立学校について現行法にはない私立学校を取り上げており、「私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない」と規定している。
 教育基本計画については新たに盛り込む規定で政府に教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を課しており、地方公共団体に対しては教育振興のための基本計画策定の努力義務を課している。そのほか、大学での教育・研究や幼児教育の振興、教育における家庭の責任なども取り上げている。
 教育の憲法ともいえる教育基本法に私学教育振興や年次計画を立てて教育振興を図る規定が盛り込まれ、文教行政上に私学教育がこれまでにも増してしっかりと位置づけされることに私学関係者は強い期待を寄せている。しかし教育基本法は理念法のため、具体的にはすでに論議が始まっている学校教育法を始めとする関係法がどのように改正されるか、教育振興基本計画の具体的内容や財源の確保などが焦点となる。教育基本法改正案については、五月の連休明けに特別委員会を設置して検討するかどうかを、衆議院の議院運営委員会で協議することになっている。また民主党と日本共産党から本会議での趣旨説明の要求が出ており、野党側は改正案に反対の意向。通常国会の会期は六月十八日まで。教育基本法改正案が六月に成立するかどうかは会期延長論議も絡んで流動的だ。

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