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記事2006年5月3日 2020号 (6面) 
ユニーク教育 (157) ―― 関東学院六浦小学校
タイの少数民族の子供を支援
人になれ、奉仕せよの精神で
 タイのチェンマイから車で六時間ほどいった所にティワタ村がある。この村に住んでいる少数山岳民族カレン族の子供たちに支援活動を行っている小学校がある。
 関東学院六浦小学校(島田正敏校長、横浜市金沢区)では、一九九四年からさまざまな支援活動を行っている。
 支援活動の始まりは偶然だった。チェンマイ在住の日本バプテスト同盟の宣教師から、「ティワタ村の現状を見てほしい」との連絡が同校に入った。冬は摂氏零度になるというのに、暖房のない中で子供たちは夏の格好に毛布一枚という状態に島田校長は驚いた。そこで、同校の児童会で何ができるか話し合ったところ「小学校でできることをやろう」と支援活動が始まった。
 ティワタ村には約三百世帯の人たちが住んでおり、子供たちは幼稚園、小学校、中学校で勉強している。しかし、家が遠くて学校に通えない百六十人ほどの子供たちは寮生活をしている。寮費は一カ月百バーツ、日本円で約三百五十円かかる。しかし、百バーツを払えない家庭がある。
 子供たちはカレン語を話すが、共通語であるタイ語も学校で学ぶ必要がある。手に職を身につけ、将来、現金収入を得て自活していくためにも、タイ語を話すことができるようにならなければならないからだ。
 二〇〇三年十月に支援活動を始めて十年目を迎え、同校の献金で女子寮が完成した。献堂式には同校の三人の児童とその保護者が参加し、児童たちにとっては記念すべき体験となった。翌年、二回目の訪問では同学院大学生と大学院生も参加、また十三年目となる今年の八月には経済、工学、文学の各部からなる「関東学院サービスラーニングセンター」のプロジェクトチームをつくり訪問することになっている。
 「現地へ行く児童とその保護者は、希望者四〜五人からなります。私は年に二回ほど行っていますが、小学生の活動としては珍しいと思います。支援活動を学校行事として取り組み始めて四回目となります」と島田校長は振り返る。
 支援はバザーの収益金など含めて、年間三十〜四十万円を毎年、献金(薬代や寮費など)しているほか、古着なども送ったりしている。
 また、エイズにかかった子供たちや、さまざまな理由で共同生活をしている女性たちを保護しているチェンマイにある施設「愛の家」を訪問、交流し、献金をしている。ここには二十数人が暮らしているが、路上生活していた難聴の女の子もいる。ここの子供たちが作ったネックレスを同校が購入し、児童たちが小遣いを出し合い買った。売上金はエイズ治療薬の購入の資金が足りないため、その購入資金に充てるのだ。
 これらの支援活動には、同学院百二十余年の歴史を通して、受け継がれてきた建学の精神「人になれ、奉仕せよ」のルーツをみることができる。
 「この建学の精神を実践しなければならないと思っています。このような交流をすることで、本校の子供たちにとってきっとプラスになると思います」(島田校長)
 昨年の暮れには、関東学院大学キリスト教と文化研究所の主催で、同校礼拝堂と、チェンマイにあるカレンバプテスト同盟会議室をISDN回線で結び、同時生中継を実施した。チェンマイには「愛の家」の子供たちと、ティワタ村の子供たちが集まり、「きよしこの夜」を、同校の児童がタイ語で歌い、タイの子供たちが日本語で歌った。
 「この活動は情熱を持って行わなければ、長続きしません。当初は私一人で四〜五年行っていましたが、周囲の人たちが応援していただいたおかげで、学校として続けていられると思います」と島田校長は熱く語った。

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