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記事2006年4月13日 2018号 (6面) 
地域振興に貢献 (6) ―― 早稲田大学
大学や専門学校が地域と連携

 早稲田大学(白井克彦総長、東京都新宿区)は二〇〇七年、創立百二十五周年を迎える。創設者大隈重信が唱えた「人生一二五歳説」に因み、この節目を「第二建学」と位置づけ、原点に立ち戻って、さまざまな改革を推進している。二十一世紀、グローカル・ユニバーシティを目指し、開かれた大学として地域社会への貢献と次世代の教育・研究への変革を進めていく。友成真一・早稲田大学理工学術院教授に東京都墨田区との地域連携について伺った。



地域と丸ごと連携
互いの資源を最大限に活用


 「地域連携の素晴らしさは、企業や大学の利益だけを考えるのではなく、地域連携に携わった人たちみんなが幸せになるように目指すことです。主役の学生と地域とがお互いに尊敬し合う関係をつくり、学生は自分たちが活性化しないと地域が活性化できないと考えるようになるのです」と友成真一・早稲田大学理工学術院教授は熱く語る。
 同大学は二〇〇二年十二月、東京都墨田区と「産学連携に関する協定」を結び、今まで多彩な取り組みを進めている。墨田区の活性化に向けて、地域の産業振興分野だけではなく、文化の育成・発展、人材育成、街づくり、環境問題など、幅広い分野での包括協定だ。
 大学がどのような考え方に基づいて、地域連携を行っていくか。
 「日本を活性化するためには、大学も地域も眠っている、使われていない資源を発掘し、最大限に活用し、その資源を連携させる必要があると思います。また、日本が閉塞(へいそく)感に満ちて、あらゆる組織がたこつぼ″\造となっています。大学が自己中心的な考え方をしている限りは、地域とつき合うことはとてもできません」と友成教授は厳しい見方をする。
 双方の眠っている資源を活用し、閉塞感を打破するヒントは、大学の地域に対する接し方にあると言う。
 「大学は地域を丸ごと抱えてつき合わなければ、地域とつき合ったことにはなりません。地域は部分的にイベントを一緒にやりたいといっているのではありません。地域は丸ごと大学と連携しようという気持ちなのです」
 そう考えた上で、大学は学生が参加できる機会を与えることができる。友成教授は指摘する。
 「大学と地域の考えが、互いの資源を最大限に活用して地域活性化することで一致すれば、学生が自分の力を試す素地ができます。大学にとっての地域連携の意義はここにあるのです。学生が社会で生きていく上で、競争力を身につけ、高めていくということが、地域での社会との勝負を通じての実現できます。まさに、これが実学です」
 友成教授の、墨田区を活性化するプロジェクトの一つとして、新年度から始まった「地域経営ゼミ」がある。学生二十五人が三チームに分かれて、プロジェクトのテーマを考え、実行し、発表する。まずテーマを決めるのがたいへんで、常に地域の活性化とはどういうことなのかに視点を置き深く、掘り下げていく。最初は墨田区を好きになることから始め、区長へのインタビュー、墨田区の産業を支えている中小企業の視察、ディスカッションなどを行ったり、昨年度は八月と十一月の二回合宿も行ったりした。
 「テーマをグループで共有できるかの決め手は、プロジェクトの成功のイメージを深く掘り下げること」と友成教授。


ゼミの最後に研究成果発表
会社対抗寄席や「晩飯を食べよう」


 ゼミの最後に、地域の人たちの前で研究成果を発表する「大プレゼンテーション大会」が一月十九日、同区のすみだ中小企業センターで開催された。
 ある班のテーマは「会社対抗寄席」。墨田区で働く新入社員と、落語界の新人が協力し、互いに異なる組織にとけこんでいくことを目的に寄席を活用する。
 ある班は「晩飯を食べよう」がテーマ。墨田区内に住み着いた学生が、同区の家庭で一緒に晩飯を食べようという企画だ。その前に実験的に行ったのが、地方出身の学生が、実家から通っている学生の家庭で、一緒に晩飯を食べながら、いろいろ話をするという試み。
 「日ごろ、親子であまり会話をしていないのが現状ですが、ここに他人が入って、親の仕事のことや、学生生活の様子を話し合う。晩飯を一緒に食べることで、血のつながりのない新しい家族像が創造できるのです」
 地域連携の根本は「相手に対してどれだけ興味を持てるか、どれだけ尊敬の心を持つことができるか、この気持ちを築き上げることです。最終的には学生が、愛情を持って、地域・社会の発展にどれだけかかわっていくことができるか」(友成教授)という点に尽きる。
 このゼミの核心は、学生が自分たちでも社会とかかわり、社会を変えることができるのだという実感をつかむということだ。これによって、学生自身が磨かれ、競争力も向上するといえる。
 このほか、昨年五月、同大学は埼玉県本庄市と「協働連携に関する基本協定」を締結した。この協定は包括的な連携の下で、活力ある地域づくり、産業振興や人材育成を図り、地域社会の発展に寄与することを目的とし、現在順調に進んでいる。



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