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記事2006年3月3日 2014号 (4面) 
専門職大学院 (6) 明治大学専門職大学院  会計専門職研究科
会計専門職業人養成
知、技、心、個を備えた会計プロ
国際会計科目を充実
 明治大学(納谷廣美学長兼総長、東京都千代田区)は昨年四月、大学院会計専門職研究科(以下、会計大学院)を開設した。同大学は公認会計士、税理士、国税専門官などの会計専門職業人を伝統的に多数輩出してきたが、平成十八年度から始まる新・公認会計士試験にも対応し、新たに「知」、「技」、「心」、そして「個」を備えた会計プロフェッショナルを育成しようとしている。山浦久司・明治大学会計大学院研究科長にその取り組み等を伺った。


 ――会計大学院を開設した背景をお話ししてください。
 山浦科長 公認会計士試験に合格するため予備校などでテクニックを覚え、現実の会計の世界を知らないで合格してしまう場合があります。本来、知識、スキルとともに、会計の本当の重要な役割である理論的かつ公正な判断力や、職業倫理に基づく決断力を学ぶことが重要なのです。
 専門職大学院では実際、社会経験をしてきた人たちが会計の本当に重要な役割を学びたい、あるいは将来プロの会計士としてやっていきたいという志を持って勉強することが理想的です。そうだとすれば、夜間開講して社会人が入学できるようにすることが一つの方法ですが、夜間の講義だけでは、理想とする会計のプロフェッショナルを二年間で育てるには難しいのです。その意味で、本大学院は昼間開講としたのです。

 ――会計大学院で育成する人材もそのような視点から考える必要がありますね。
 山浦科長 はい、単なる専門知識や技能の修得だけでなく、職業倫理に根差した判断力を有する人材をはぐくんでいきたいと考えています。
 次代を担う会計のプロフェッショナルとしての「知」「技」と、高い職業倫理に裏打ちされた「心」が不可欠なのです。「知」「技」の部分では、会計に必要な知識、スキルと考えられますが、「心」の部分として、会計のプロとしての社会的公正と正義の実現に向けて弛まぬ努力を積み重ねる会計人を意味します。

 ――教育方針としてどのようなことを掲げていますか。
 山浦科長 専門的知識やスキルとともに、職業倫理に根差した判断力を有する人材を育成することを教育の理念に掲げています。
 特に、時代的要請に応えられる会計士としての判断力ができるかどうかを重視しています。会計の知識やスキルを磨くことは当然ですが、その担い手が「個」の部分である心構えを確立していくことだと思います。

 ――カリキュラム上の大きな特色を教えてください。
 山浦科長 第一に高度専門職業人の育成を最優先目的とした、段階的かつ体系的なカリキュラムを編成しています。科目は基本、発展、応用実践に分類され、無理なく網羅的にバランスよく、学べるように配慮しています。
 第二に、企業活動のグローバル化に対応した会計プロフェッションの養成のため、国際会計を独立した科目とし、国際会計税務や各国会計制度などの国際会計系科目を充実させています。ビジネス・プレゼンテーションなどを通じた基礎的対応力の向上を図ることができます。ネイティブの教員と院生によるエキサイティングな講義を展開しています。とりわけ、国際会計研修の授業では、カナダ・トロント市にあるヨーク大学との間で作成する「明治―ヨーク国際会計プログラム」を受講できます。最終的に二週間の現地研修を受けられるのは大きな特色です。
 第三に、実務即応型の指導体制を取っています。それぞれの分野において第一線で活躍している教授陣による一般講義やケーススタディは、将来、実務に就くための実践的な勉強の場となり、院生には好評です。
 また、IT(情報技術)スキルを磨くため、講義と実習の両面を持つ「会計ソフトウェア実務」の授業を展開しており、ここではソフトウェアの実践的な勉強ができます。

新・公認会計士試験にも力

 ――入学定員はどうなっていますか。
 山浦科長 昼間開講の修業年限二年制の大学院です。入学定員八十人のうち、一般入学試験とは別に、本学学部生を対象に学内選考試験では二十人程度を募集します。一般入学試験では、六十人程度を募集します。平成十七年度は二百七十六人の志願者に対して、合格者は百五十四人でした。このうち、七十八人が入学しました。

 ――院生の様子はどうですか。
 山浦科長 昨年開講した当初は、勉強の仕方、どのような勉強をするのかなど、いろいろ分からないことが多く戸惑った院生がいましたが、後期になって会計大学院の講義にも慣れてきたようです。定期試験をかなり厳しくしていることが導火線になって、後期は院生の目の色が変わってきました。院生の大方は二十代の人たちで構成されています。

 ――新・公認会計士試験に力を入れていると思いますが。
 山浦科長 平成十八年から公認会計士試験が一新されます。本学会計大学院修了者に対する受験対策としては、短答試験における企業法合格を確実にすることを前提に、論文試験合格に集中した学習に取り組むことができるようにしています。大学院での勉強を公認会計士の試験勉強の手段と考えている院生と、一方で将来会計のプロとして生きていくために広く学ぼうと考えている院生がいます。院生が将来進むべき道に対しては、専任の教員が個別に相談に応じています。
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