こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2006年3月3日号二ュース >> VIEW

記事2006年3月3日 2014号 (4面) 
地域振興に貢献 (5) ―― 文化服装学院
大学や専門学校が地域と連携
問屋街の地域活性化 問屋街と共同
「トンヤdeサファリ」 学生を育成

 文化服装学院(大沼淳学院長、東京都渋谷区)が日本橋横山町・馬喰町の問屋街地域活性化プログラム「トンヤdeサファリ」に取り組んで、今年で三年目になる。同学院と、問屋街が立ち上げた問屋街活性化委員会とのコラボレーションは試行錯誤をしながらも、問屋の街活性化とともに、問屋街と同学院が共同で学生を育てようという気持ちが一つになり、大きな注目を浴びている。




 同学院は設立以来、世界を視野に入れたファッション教育とそのための情報拠点づくりに取り組んでいる。多くの企業と協力しながら実施している企業研修や、幅広い分野から第一線の講師を招いて行われている特別講義などは、産業界との連携の表れだ。「学ぶという視点から学生が満足する方向にプログラムを持っていくこと、そして、問屋街のための活性化という着地点に落ち着くようにすることを考えなければなりません」と方針を語るのは、同学院教務部教務一課の宇野明美課長だ。
 三年前、東京商工会議所、中央区、同問屋街から問屋街活性化の話があり、同学院の教員が問屋街を見学し、学生の問屋街見学後、問屋街の活性化と同学院の授業をどのようにマッチさせ、実践的授業に発展させるか教員間で打ち合わせなどを行った。
 同学院には服飾、ファッション工科、ファッション流通、ファッション工芸の四つの専門課程を擁するが、問屋街活性化に取り組んだのは、ファッション流通専門課程の学生たちだ。この課程では、商品の流通・販売促進・情報にかかわる広い分野で求められる人材を育成している。ファッション産業では流通分野が果たす役割は大きい。それは流通ビジネスの形態、情報などを伴う販売活動が、商品の価値を大きく左右するからだ。ファッション流通専門課程には、ファッションビジネス科、スタイリスト科、ファッション情報科、およびファッション流通専攻科がある。この三つの科と専攻科が問屋街活性化のために、それぞれ役割を担うことになった。
 ファッションビジネス科の学生たちは、問屋街を見学し、、「宝の山を探した」(宇野課長)。ここでは、店員さんの接客の仕方、商品の陳列の仕方など、学生の視点からさまざまなことを観察した。「どのような問屋が売れているのか」「問屋は売れるための努力をしているのかどうか」「問屋はどこを改善したらいいのか」――など、発見する絶好の機会だった。
 スタイリスト科の学生たちは、問屋街で扱っている服飾アイテムをコーディネートし、横山町奉仕会館で展示した。今までの問屋街は商品を単品でただ並べるだけだったが、学生たちが各テーマに沿ってアイテムをコーディネートすることによって、展示は斬新(ざんしん)な形となってよみがえった。
 また、ファッション情報科の学生たちは、学生の視点から問屋街を取材し、「トンヤdeサファリ」参加店の店頭に掲げるサインポスターや、見学の際に学生がつけるワッペンなどを作成した。
 昨年十一月十八日、文化服装学院で「発表&ファッションショー」が開催された。「トンヤdeサファリ」の中間報告や、ファッション流通専門課程の学生の活動報告やファッションショーが盛大に披露された。ここで、同学院の学生たちと問屋街の人たちとは目標が一つになった。
 「一年目は本学院としては提案中心でしたが、二年目はわれわれも問屋のことを理解する必要があると思いまして、問屋の社長さんたちに来ていただき、講義をしてもらいました。学生たちに問屋のあり方や、顧客への接し方、商品の値段のつけ方など話してもらいました」(宇野課長)
 同学院の卒業生は一年目には四〜五人が問屋街に就職したが、二年目には十五人が就職した。学生たちが問屋街の活性化のための「トンヤdeサファリ」に取り組んできた成果がこんなところにも表れてきた。従来、問屋街にはなかった新しい風が吹き始めている。
 同学院はそのほかにも産・官・海外とのあらゆる方面で連携し、プログラムを進めている。クラスや学科の全員で授業の一環として取り組むもの、希望者によるゼミナール形式のもの、コンテスト形式のものとさまざまだ。デザインの提案、新商品の企画など、企業のノウハウと学生の創造力が融合した作品が生まれている。



記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞