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記事2006年3月13日 2015号 (1面) 
私学事業団 経営分析・改善で報告書刊行
これから10年が改革好機
民事再生手続き申し立ての仕組みや手順も提示
改善計画策定の手法示す 学生募集の成功事例も
 出生率の低下等から私立大学の約三割、私立短期大学の約四割が定員割れを起こすなど、私大経営は厳しい状況を続けている。民事再生手続きの申し立てを行う学校も出始めており、大学の大量倒産時代も現実味を増している。そうした中で日本私立学校振興・共済事業団はこのほど学校法人が経営困難に陥る原因や経営改善計画を策定する際の手法、危機に陥った場合の再生手段の概要、現状を知るための財務分析、実際に募集力を上げた学校法人の事例等を掲載した報告書を刊行した。

 『これからのマネジメントを考える』とタイトルを付けられたこの報告書(私学経営情報二十二号)は、同事業団の私学経営相談センターがまとめたもの。同報告書によると、経営困難に陥った原因では少子化に伴う学生数の減少(外部環境)が主な原因ではあるが、社会のニーズ等経営環境への対応の遅れや判断ミスなど内部環境(教育・研究、学生サービス、人事制度、コスト意識等)によるものも多く見られるとしている。経営悪化の原因が分析された後、経営改善のための課題を明確化、問題点を見直し、経営改善計画を策定、目標を達成するための具体的スケジュール化を行う必要性を指摘している。経営理念・経営方針、理事会、財務状況の把握、学生へのサービス、組織の強化、人事政策などについて経営状況を把握するためのチェックリストを掲載し、日頃からの点検も求めている。また学生の満足度を第一に考え、学生のニーズを満たすための仕組みを考えること、建学の精神を柱に他校とは一線を画す独自性を確立すべきとしている。
 一方、経営状況が悪化、自力再建が難しくなった場合に検討すべき整理法として「私的整理」(債務免除、条件変更など)、「私立学校法による整理」(合併、分離、解散、解散命令)、「法的整理」(破産、民事再生手続き申し立て、特定調停)の仕組みや手続きの流れを紹介、また業務提携(アライアンス)とM&Aの違いや注意点も掲載している。
 収容定員充足率や帰属収支差額比率(帰属収入に占める、帰属収入から消費支出を差し引いた額の比率)などの経営判断指標を用いた経営分析も紹介、実際募集停止に至った学校の実例から帰属収支差額比率がマイナス三〇%以下の状態が数年間続いた場合には学校の存続が危ぶまれる状況と判断してよいだろうとしている。そうした上で募集力を挙げた神戸国際大学、東洋学園大学、京都女子大学短期大学部、聖和学園短期大学、江南義塾盛岡高校、水城高校の成功例を掲載している。
 今後、平成二十(二〇〇八)年から十年ほどは十八歳人口が百二十万人台で推移し、その後ボトムと見られる六十万人台にかけて本格的な減少期の到来が予測されているが、同報告書では、この十年間が学校の改革と財政基盤強化の最後のチャンス。その間の取り組みがその後の学校法人の存否を決めるだろう、と指摘している。

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