こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2006年3月13日号二ュース >> VIEW

記事2006年3月13日 2015号 (3面) 
06年首都圏私立中学入試 教育の特色、将来性に高評価、受験者増の傾向
私学志向が上昇へ
東京、千葉、埼玉で受験率高まる
公立一貫校の影響なし
 少子化が進む中で今春の首都圏は中学受験がもはや当たり前となった感がある。日能研調べによると、応募者総数は約二十八万七千人(公立一貫校も含む)と昨年の約二十六万二千人を上回り、小学校卒業生の中学受験率は一八・〇%(昨年一六・二%)と過去最高を記録した。特に東京都の受験率は二八・〇%と突出し、小学校卒業生の三人に一人が中学受験をしている数値となった。この数字の中には都立・区立一貫校および埼玉県立一貫校の受験者も含まれるものの、少子化と公立一貫校による私立中学受験者数の大幅減少は杞憂(きゆう)になったようだ。かえって相乗効果で私立中学への受験生が増える結果となった。(編集部)

 今年の私立中学入試の特徴は、千葉と埼玉で受験率が高まったこと、入試科目の四科目化が進んだこと、午後入試が増えたことだ。また、二〇〇六年度から東京では公立一貫校が新たに四校開校して五校となるため、少子化もあって私立中学入試に影響が出るのではと危惧(きぐ)されたが、実際には、慶應義塾中等部が入試日を昨年までの五日から三日へ、公立一貫校の入試日にぶつけたが影響はなく、影響を受けたのは国立の附属校の数校で、私立中学にはあまり影響がなかったという結果になった。今年人気があった学校は、進学実績を上げることに加えて、居心地のいい教室づくりや理科室等を整備しているところ、図書館が充実しているだけでなく司書がきめ細かい対応をしているところ、将来活躍できるためにどんな教育をしているかなど、自校の教育の特徴や良さをきちんと保護者に説明しているところだといえよう。その意味では、二〇〇六年麻布で受験者が増加したのは、進学実績ももちろんだが、その先の将来をみた教育が見直されたようだ。また学園全体が改革を進めている大学附属校も人気が高かった。
 日能研調べ(公立一貫校受験者を含む)によると、今年三月卒業の小学生数は約二十九万四千人(昨年約二十九万人)、受験者数は約五万三千人(同四万七千人)、応募者総数は二十八万七千人(同約二十六万二千人)だった。受験率は首都圏全体が一八・〇%(昨年一六・二%)、都県別では東京二八・〇%(同二二・九%)、神奈川一三・四%(同一三・七%)、千葉一一・五%(同一一・〇%)、埼玉一四・八%(同一四・〇%)だった。
 少子化が進んでいるにもかかわらず、公立を含むとはいえ応募者総数は大幅に増加しており、受験者数も増加している。受験率で見ると首都圏では五人に一人、東京に限れば三人に一人が中学受験をしていることになる。受験者数も五万三千人と昨年より六千人増加し、増加したうち約四千人は公立一貫校のみの受験者とみられ、私立中学受験者も二千人ほど増加している。併願校数は平均五・四校(昨年五・六校)と昨年より〇・二ポイント下がったものの、千葉・埼玉の受験生が地元私立中学の一月入試を受けて、二月一日、二日、三日と東京の私立中学を受験する傾向はここ数年変わらない。

幕張、麗澤など軒並み増加
実践、昭和女、八雲、富士見丘など女子校

 今年は特に千葉と埼玉で中学受験率が上昇傾向にあり、千葉では渋谷教育学園幕張が一次の応募者数二千五百九十五人と昨年より多くなった。芝浦工業大学柏、専修大学松戸、麗澤、千葉日本大学第一、国府台女子学院、江戸川学園取手などでも応募者が増加した。このうち芝浦工大柏と専修大松戸は入試日程を調整したことで多くの受験者が集まったようだ。
 減少したとはいえ、市川は一次で三千六百九十五人、東邦大学付属東邦も三千九百十五人と多くの応募者を集めている。
 埼玉では浦和明の星女子が変わらぬ人気で応募者が二千四百十七人、大妻嵐山が二千二十六人と、いずれも昨年を上回った。また城西川越、西武学園文理、獨協埼玉、大宮開成、星野学園、埼玉栄、栄東、開智などで増加した。特に栄東では東大選抜クラス(定員三十人)に約七百二十人の応募者が集まっている。
 都内私立中学で応募者が増加したのは、男子校では麻布、芝、攻玉社、武蔵工業大学付属、高輪、法政大学第一、日本大学豊山など。難関校は数十人程度の微減が多かった中で、麻布が百人ほど増えたのが目立った。武蔵工大付属は午後入試といったこともあり受験者が集まった。女子校では実践女子学園、八雲学園、富士見丘、江戸川女子、目黒星美学園、昭和女子大学附属昭和などで増加。目黒星美学園と昭和女子大附属昭和は進学実績が上がったことなどから増加したようだ。年々難度の上がる豊島岡女子の人気は変わらず、応募者は微減だが、二年連続で二千六百人を集めている。実践女子学園も昨年より五百人多い二千七百人が応募。最難関の桜蔭も微増した。共学校では穎明館、國學院久我山、青稜、日本大学第一、桜美林、多摩大学附属聖ケ丘、淑徳など。淑徳はスーパー特進クラスへの応募者が約二倍になった。
 また、嘉悦女子は二〇〇六年度から臨海副都心・有明に校舎を移転し、今春は共学のかえつ有明として初めての入試だったが、女子のみでも総合進学クラスは従来の二倍、難関大学クラスは従来の四倍から五倍の応募があり、男子も含めて全日程合わせると一千人の応募があった。
 神奈川では桐光学園、湘南白百合学園、カリタス女子などで増加した。神奈川はキリスト教主義のところや、進学実績を上げているところも多く例年安定した受験生を集めている。男子校の浅野は入試日が公立一貫校や移動してきた慶應義塾中等部の三日と同じだが、昨年とほとんど変わらない二千三百人の応募者があった。女子校は苦戦ぎみだが、カリタス女子は進学実績が上がったこと、午後入試を実施したことから受験者が大幅に増加した。

午前と午後二回の入試
難関校の入試は四教科型

 今春入試では、一日のうちに午前と午後の二回入試をするところが増え、結果として午後入試そのものが増えた。理由は午後入試が受験生を集めやすいからで、特に二月一日の午後入試が増えている。一日の午後入試に受験生が集まったカリタス女子はその日のうちにインターネットなどで合否発表をしている。カリタス女子のように午後入試実施校では試験当日に合否発表するところが多く、受験生にとっては、合格していれば翌日以降に上位校へチャレンジすることができるため、最近は午後入試に受験者が集まる傾向がある。しかし、このため受験生の動きが複雑になり、学校側からみると午後入試でより多くの受験生を集めることが可能になる一方、合否ラインの線引きが難しくなったといえる。
 入試科目は四科目化が進み、難関校のほとんどが四科目入試となった。青山学院も今年から四科目となり、来春は成蹊も二科目・四科目選択から四科目となる。さらに、特選クラス入試を別枠で実施するところも増えた。また、寮のある函館ラ・サールや那須高原海城、土佐塾の東京での入試にも多くの応募者が集まった。西大和学園、海陽中等教育学校も受験者が集まっている。
 国立にも動きがあり、お茶の水女子大学附属、筑波大学附属、横浜国立大学鎌倉・同横浜は抽選を廃止した。


【開校する 都立・区立一貫校の入試動向】

難度は私立難関校と大差
絶対評価の内申書評価問題

 二〇〇六年度から都立一貫校として小石川中等教育学校、両国高等学校附属、桜修館中等教育学校(母体は都立大学附属高校)、千代田区立九段中等教育学校が開校する。昨年、開校した白鷗高等学校附属と合わせると、東京都内の公立一貫校は五校となる。
 都内公立一貫校の入試結果について、日能研進学情報室の井上修室長は、合否の境界線は平均偏差値五十台前半から半ばくらいで、最も難度が高いといわれた小石川でも五十五、五十六くらいだった、私立難関校とは大きく差があると言う。都立高校としての伝統はあるが中高一貫の経験はなく、結果も六年後にしか出ず、急激に人気が高まるとは考えられない。公立一貫校の入試は内申書を重視するため配分点の割合も、高いところで四割、低いところで二・五割だという。そのうえで一定レベルの適性検査を課すため、入試のハードルは高いといえよう。しかも公立小学校は絶対評価であり、その絶対評価の内申書を公立一貫校がどう評価するかという問題もある。
 白鷗も開校した昨年は初めての都立一貫校ということもあって約二千人の応募者を集めたが、今年は近くに両国が開校することで受験生が割れ、応募が約九百人と半分以下になった。今後、内申点の割合は、現在、筑波大附属駒場が二割となっていることからみて、公立一貫校でも最終的には下がっていくのではないかとみられる。
 井上室長は、「ふたを開けてみると、日能研の中で都立・区立一貫校受験生は一割ほどだった。その子たちは公立だけでなく私立も受験している。公立ができたことで私学も受けてみようという人が増えたと考えられる。二〇〇七年度以降、全国に公立一貫校が増えるが、その結果、中学受験の流れが全国に拡大して新たな受験者層を掘り起こすことになり、私立中学の受験生が増加するのではないか」と話している。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞